東日本大震災

宮城・気仙沼、がれきもない焦土の港 泥棒のうわさ、治安への不安も

2011年03月22日
港から市街地まで流されてきた漁船=21日午後1時53分、宮城県気仙沼市
港から市街地まで流されてきた漁船=21日午後1時53分、宮城県気仙沼市
 東日本大震災から11日目の21日。甚大な被害を受けた宮城県気仙沼市を訪ねた。有数の水揚げ量を誇る港町にはサンマやイカが散乱、大規模火災が発生した地域では今なお焦げたにおいが立ち込める。本県の“被災地支援隊”はこの日もフル回転、最上町からは「足湯」が届けられ、被災者の心と体を癒やした。(仙台支社・松田直樹、報道部・阿部研一、堀川貴志)

 JR気仙沼駅の1つ隣の駅・鹿折唐桑駅前には赤と青の漁船がそびえ立っていた。船体に黒く焦げた跡が残る。焼き尽くされた漁港には油とともに焦げたにおいが立ち込め、他の津波被災地と様相を異にする。

 焦土の港町で、ベニヤ板を地面に打ち付ける人がいた。「近所の人に『自分は無事だ』と知らせたくて…」。気仙沼市中みなと町、会社員小野啓太さん(54)。板には小野さん夫婦の名前と「2人共に無事」と記されてある。「家がこんな状態だから、(妻が)亡くなっていたことになっていたので」

 震災時は隣町で仕事をしていた。急いで自宅に戻ろうとしたが、既に火の手が上がっていた。ガソリンと重油のタンクが倒れ引火、火のついたいかだのようなものが津波で流され、あちこちで火を放っていった。「あれがわが家があった場所です」。指の先には黒焦げの残骸があるだけ、建物はほぼ残っていない。

 南気仙沼駅の南側に位置する内ノ脇(ないのわき)でも大規模な火災が発生した。何かを探そうとしているのだろうか。家族が焼け跡で腰をかがめているが、流されたのか、焼き尽くされたのか、がれきすら見えない。「あれ、おばあちゃんの家かな…」。若い女性が家族に問い掛ける。「でも、すっかりなくなって、どれか分かんないね」

 自衛隊が遺体を搬送してきた。その傍らを、泥だらけの自転車に乗った男性が通り過ぎていった。津波で浸水したが、火災の被害はすんでのところで免れた自宅前に、小野寺てい子さん(75)が立っていた。「泥棒が入ってきているとうわさで聞いたので、貴重品を取りに来ました」

 山あいの避難所では女性(59)が不安げな表情を見せた。「窃盗団が入ってきているとか、包丁を持った男に脅されたという話を聞いた」。うわさがうわさを呼ぶ。電気が復旧しないため、治安に対する懸念はより深まっているという。男性(60)は「10日くらいなら我慢もできるが、先が全く見えない。生きているだけでいいと思わなきゃいけないんだろうけど」。自分に言い聞かせるようにつぶやいた。

■最上のNPOが炊き出し、温泉足湯も
\r\n$p_unit 気仙沼市の避難所の一つ浄念寺に、最上町のNPO法人やまなみ(大場武男理事長)が駆け付け、炊き出しと足湯のサービスを繰り広げた。境内には「がんばろう東北!復興の道へ手をつなごう」と書かれた看板を設置。墓参り客は少ないが、彼岸の中日らしいにぎわいを見せた。

 スタッフ26人が車5台で到着。地元瀬見温泉の源泉を100リットルタンクで3個、豚汁600食を用意した。鍋を持って並ぶ住民に振る舞うだけでなく、一人暮らしの高齢者が多いという公営住宅への出前も行った。10年前に亡くなった夫が尾花沢市出身という矢作しげこさん(75)は「山形のサトイモはとろとろしておいしいのよね。山並みを思い出してうれしくなった」と感慨深げに語った。

最上町のNPO法人「やまなみ」のメンバーが足湯を準備。被災者たちは温かい湯に感激しながら体を癒やしていた=21日午後1時41分、宮城県気仙沼市
最上町のNPO法人「やまなみ」のメンバーが足湯を準備。被災者たちは温かい湯に感激しながら体を癒やしていた=21日午後1時41分、宮城県気仙沼市
 「もー最高」「いい湯加減だ」。津波が運んだ重油にまみれた後、風呂に入れなかった避難所のお年寄りが多いだけに、足湯は大人気。孫のような若い女性スタッフは話の聞き役に回った。最上町に帰省中、震災ボランティアとして参加した東京都板橋区、専門学校生佐藤麗さん(20)は「笑顔とありがとうの言葉をもらえて、少しだけ力になれた気がした」と話した。

 自宅も家業のコンビニも流された避難所リーダーの作並慎一朗さん(34)によると、現地のライフラインはすべて遮断されたまま。100人の被災者がいながら市の指定を受けていないため、物資は20日に入り始めたばかりで、「食事に加え温泉まで、温かい支援は初めて」と感激した様子だった。一方で「市街地の避難所は食事や衣類など充実しており、サービスの格差が広がっている気がする」とこぼした。
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