東日本大震災

患者、医師ら「庄内の味」に感激 石巻の病院で有志が海鮮鍋振る舞う

2011年03月28日
庄内の食材で海鮮鍋を作る庄内浜文化伝道師のメンバー=宮城県石巻市・石巻赤十字病院
庄内の食材で海鮮鍋を作る庄内浜文化伝道師のメンバー=宮城県石巻市・石巻赤十字病院
 東日本大震災で壊滅的な被害を受けた宮城県石巻市。目前まで津波が迫った石巻赤十字病院は、最前線の拠点病院として被災者の命を支えている。生と死が隣り合わせの中、スタッフ、患者たちは地震発生から2週間余りを過ごしてきた。そんな彼らを庄内の豊富な素材と粋な味で元気にしようと27日、有志が病院で腕を振るった。料理を手にして涙した入院者。安らぎを覚える味に笑みをこぼす医師。それぞれが口にした。「これからまた頑張れる」。復興の時に向け、東北の人たちが力を結束させる姿があった。(報道部・板垣耕一、進藤和美、稲村裕介)

 雲の間から時折顔を出す太陽が恋しいほど、冷たい風が肌に突き刺さる。閑静な住宅と田園に囲まれた石巻赤十字病院に響き渡るドクターヘリの発着音、軒を連ねる日本赤十字社の仮設テント、相次いで出入りする被災者…。のどかな町並みとは対照的な光景が広がっていた。

 そんな現地に27日午前10時前、早朝に庄内を出発した「庄内浜文化伝道師」ら約30人が到着した。ハタハタやタラ、ネギ、コマツナといった庄内の食材、大型調理鍋、プロパンガスなどを4トントラックに積み込んでいる。この日の昼食と夕食の2回、入院患者や病院で働くボランティア、医師たちに出来たての海鮮鍋を提供するのが目的だ。どんがら汁、浜鍋汁など昼、夕合わせて2000食分。伝道師の一人で生活協同組合共立社(鶴岡市)の一谷正さん(62)は「鍋だけでは足りないという話になり、急きょ、夕食用にカレーも作ることになりました。今朝、1俵分の米を炊いてきたんです」と話した。

 病院地下1階のフロアに“炊き出しルーム”を設置。メンバーが手際良く机や鍋を並べ、早速調理を開始した。食材は事前にある程度手を加えており、1時間ほどで立ち込めたしょうゆやみその温かな香り。3日前に仕込み作業に着手した日本料理鵜渡幸(うどこう、酒田市)の総料理長須田剛史さん(35)は、「より体が温まるように、みそや油の量を増やした」。そう話す自身も宮城県村田町の出身だ。「まだ(安否の)連絡を取れていない知人は多い。複雑な心境」と黙々と調理を続けていた。

 地震発生当初、赤十字病院の食料事情は困難を極めたという。安定した食材入手は厳しい状況。入院患者への1日3食の食事に四苦八苦し、1食につき乾パンやゆで卵のみの時もあった。救援物資として届けられた缶詰でしのぐなど、まさに綱渡り状態。医師に至っては「味のついていない、ピンポン球ほどのおにぎり1個」(病院関係者)で激務に当たった。

浜鍋汁に「おいしい」と感激する内海藤子さん(左)
浜鍋汁に「おいしい」と感激する内海藤子さん(左)

 野菜やつみれも入った具だくさんの鍋。関係者に「震災後、一番豪華な料理」と喜ばれた浜鍋汁は、入院患者の食事に添えられ、各病棟に運ばれた。間一髪、津波から逃れたという地元の内海藤子さん(68)は「石巻のつみれもおいしいけど、これもおいしい」と笑顔で話した直後、ぴたっと箸を止めた。「本当に…、ありがたいです」。うつむき、涙で声を詰まらせながら感謝した。

 医師やボランティアには、地下1階のフロアで直接手渡した。次々と列をつくっては鍋を頬張り、「すごくうまい」「温まっておいしい」「幸せな気持ちになる」-。そんな喜びの言葉が広がったフロア。伝道師たちは「激盛です」と笑いながら、あふれるほどのスープと愛情も注いでいた。

【庄内浜文化伝道師】庄内浜の魚介類の消費拡大、食文化普及を目指し、2007年に県庄内総合支庁が設けた。現在までに調理師ら約140人を認定。県内各地で料理教室を開催するなど、積極的な活動を展開している。
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