東日本大震災

神町自衛隊が石巻で奮闘 住民の「ありがとう」に励まされ

2011年03月31日
住宅街にヘドロと共に流れ込んだ工場の資材などを手作業で取り除き、行方不明者の捜索を続ける第20普通科連隊の隊員たち=30日午後11時51分、宮城県石巻市
住宅街にヘドロと共に流れ込んだ工場の資材などを手作業で取り除き、行方不明者の捜索を続ける第20普通科連隊の隊員たち=30日午後11時51分、宮城県石巻市
 「先は見えないが、少しずつ復旧は進んでいる。地道に作業に取り組んでいく」。東日本大震災の発生直後から、陸上自衛隊神町駐屯地(東根市)の多くの隊員が被災地に入り、行方不明者の捜索やがれきの撤去などを続けている。津波で臨海部の工場や住宅地が壊滅的打撃を受けた宮城県石巻市では30日も、ひた向きに復旧作業や生活支援に取り組む姿があった。地元住民からの期待と感謝の言葉が、隊員たちの頑張りを後押ししている。(報道部・色摩高幸、近岡国史、東根支社・三沢秀樹)

 石巻市の臨海部に隣接する大街道地区の住宅地。油混じりのヘドロの臭いが漂い、工業地帯から津波で流された巨大な材木などが道路を埋め尽くす。家屋の一部や泥まみれの車両も散在する中、現場で指揮を執る第20普通科連隊の小隊長の一人、後藤幸二陸曹長は「重機さえあれば、作業はどんどん進む。復旧の兆しは徐々に見えている」と希望を口にした。

 東日本大震災の被災地では、全国各地の自衛隊員約10万人が支援活動に従事。南東北3県を管轄する陸自第6師団のうち神町駐屯地からは同連隊など9部隊、約2200人が派遣されている。人口約16万2800人の石巻市では29日午前8時現在、死者が2283人、行方不明者が2643人、避難所生活者が約2万3000人に上り、活動拠点の市総合運動公園には隊員1000人以上が駐留している。

 大街道地区では、同連隊の隊員約300人が、行方不明者の捜索や道路の復旧作業に当たっている。重機が不足しているためスコップを使った人海戦術を主体にヘドロを除去。工場から流れてきた巨大な肥料袋などを次々と撤去した。「がれきの多い場所は50メートルの短い区間でも作業に3日はかかる。重機の数が限られ、人力を強いられている」と冨田晃生連隊長は語る。

 一方、自衛隊の活動に多くの市民が頼もしさを感じているのも事実だ。この日が卒業式だった地元の大街道小の佐藤康校長は「がれきが少しずつでも片付けば、住民の元気につながる。教職員にも授業、学校再開への希望が見えてくる」と期待を込める。家財道具の片付けのため、避難所から自宅に来ていた会社員渡辺和洋さん(44)も「道路を通れるようになるだけで気分的に楽」と話した。

 津波にのみ込まれた自宅の片付けをしていた漁業阿部正春さん(53)。敷地内に車4台が流されてきた。「自衛隊が家の前の道路のがれきを片付けてくれたおかげで、車両を撤去できた。住めるか分からないが、自宅の片付けも本格化できる」と喜ぶ。

 「自衛隊さん、ありがとう」。飼い犬と散歩していた主婦太田勝子さん(67)が隊員に声を掛けた。「津波で亡くなった夫を見つけてくれたんだ。思い出の品も何もかも流された。夫に懐いていた愛犬ダンが心の支え」。何度も頭を下げた。

 がれきの下やヘドロの中に埋まった遺体を発見することもある。これまで、同地区から50数人の遺体を収容所に運んだ。高橋広喜一等陸曹は「玄関先で高齢の夫婦の遺体を見つけた。一緒に逃げようとしたのだろう。今でも思い出すとつらい」と振り返る一方、「まだまだ行方不明者は多い。一日でも早く見つけてあげたい」と力を込めた。

■仮設入浴所「花笠の湯」、体と心温める
\r\n$p_unit 「花笠の湯」。石巻市中心部に近い石巻地区広域消防組合消防本部のグラウンドに、そう記されたのれんの掛かる野営テントが設置されている。第6後方支援連隊が22日に開設した仮設入浴所で、住民らに開放している。

 初めは男・女湯それぞれを設けた。千葉県の陸自松戸駐屯地の部隊が「松戸の湯」を設置した24日以降、花笠の湯は女湯、松戸の湯が男湯に。近くの旧北上川からくみ上げた水をろ過し、42度ほどに温めて提供。避難所往復の送迎も行い、1日に1200人以上から利用されている。

 一度に30人が入浴できる浴槽は「良く温まる」と好評。パート従業員松嶋通子さん(40)は「被災を免れた友人宅の風呂に入って以来、3日ぶりの入浴。初めて来たが、気持ち良かった」と上気した表情で語った。同連隊の武藤公仁三等陸佐は「明日への活力を養ってほしいという思いを込め、被災者に接している」と誇らしげだ。

 石巻市出身の木村尚弘三等陸曹も花笠の湯を担当していた。両親の無事は確認したが、故郷の惨状に衝撃を受けた。「入浴利用者には知人も多く、『ありがとう』という言葉が励みになる。地元出身だからこそ、積極的に被災者とコミュニケーションを取り、精神的なケアにも力を入れたい」と決意を語った。
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