東日本大震災

学ぶ、生きる-答えここに 山形南高サッカー部員がボランティア

2011年04月06日
 荒廃した街にたたずみながら思った。僕らは何のために学ぶのだろうか、何のために生きているのだろうか。山形市の山形南高サッカー部の25人が5日、東日本大震災で被災した宮城県名取市の民家や田んぼでがれき撤去などのボランティアに取り組んだ。被災したおばあちゃんは「遠いところありがとう。本当に助かった」と感謝した。なぜ学ぶのか、なぜ生きるのか-その答えは、おばあちゃんの笑顔の中にあった。(仙台支社・松田直樹、報道部・色摩高幸)

地震で足の踏み場もないほど物が散乱した室内を片付ける山形南高サッカー部員=宮城県名取市
地震で足の踏み場もないほど物が散乱した室内を片付ける山形南高サッカー部員=宮城県名取市
 きっかけはサッカー部の部長で3年生・桑山翔也君(17)の行動。父紀彦さん(48)=山形市飯田2丁目=が名取市で病院を開業しており、父と共に地震発生翌日、被災地に入った。「日本じゃないみたいだ」。惨状に衝撃を受け「自分たちができることを何かやらなければ」との思いが募った。顧問の宮舘新吾教諭(39)に相談し、学校や保護者会の了承を得て、みんなで手伝うことになった。

 午前10時半すぎ、名取市杉ケ袋、菊地和子さん(74)の自宅で、ブルーのジャージーを着た南高生が活動を始めた。庭は海辺から流れてきた大量のがれきで埋まっている。家の中はガラス窓が割れ新聞が散乱。掘りごたつには泥が入り、農機具のある作業場には海水が入った跡がくっきり残っていた。

 「せっかくの春休みなのにありがとうございます。何と言って恩返ししたらいいか分からない」。菊地さんは頭を下げる。メンバーは持参したスコップやほうきなどを駆使して、がれきを取り除いていく。副部長の3年生・斎藤拓也君(17)は泥にまみれたタイヤを洗いながら「不自由なく暮らせることのありがたみを感じた。助け合うことの大切さを学んだ」と話す。

 別の場所では消防車を磨く南高生の姿があった。フレームが完全に押しつぶされ、フロントガラスが砕け散った赤い車両。この車には、3人の消防団員が乗っていた。紀彦さんは「3人は地区内のお年寄りに『津波が来るから逃げろ』と訴えて回り犠牲になった。この消防車を保存できないか考えている」。2年生の宮崎聖久君(16)は「自分は逃げず、最後まで人の命を救おうとしたすごい人が乗っていた。思いを込めてきれいにします」と話し、泥を取り除いていく。

最後まで避難を呼び掛けた消防団員3人が乗っていた消防車を磨く部員
最後まで避難を呼び掛けた消防団員3人が乗っていた消防車を磨く部員
 「来る途中のバスの中では音楽を聴いたりしゃべったりしていたが、被災地に入って窓の景色が変わると、生徒たちは無言になり背筋を伸ばして見詰めていた。ここで学ぶことの意味は大きい」。宮舘顧問は話す。

 午後4時前。菊地さん宅の庭は石畳が見えるようになり、洗濯物を干すスペースも復活した。作業所では、海水で使用できなくなった農機具がきれいに片付けられていた。2年生の高橋優吾君(16)は「喜んでもらえて良かった。これからもボランティアに取り組みたい」。

 この日参加した部員は50人のうち第1陣の24人。10日から公式戦が始まるため、半分は練習に取り組んだ。翔也君は「みんな頑張ってくれた。和子おばあちゃんの笑顔を見て、少しでも力になれたのかなと思いうれしい。残りのメンバーともう一度来る」。人の役に立てること、笑顔を見ることの喜びを知った高2、高3の春の日を、彼らはきっと忘れない。
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