東日本大震災

家族4人失っても…ヘルメットに「まげんな!」 宮城の自衛官、終わりない任務に没頭

2011年04月12日
 津波で家族4人を失いながら、被災地の駐屯地に寝泊まりして任務に没頭する44歳の自衛官がいる。がれき撤去など危険な任務に当たる隊員を後方支援する仕事に終わりはない。「これ着てますから」。表情を変えず、迷彩服を軽く触った。

 宮城県内の陸自駐屯地。朝食をめぐって口論になった妻(42)から「まだ怒ってる?」と電話があった。「怒ってないよ」。数時間後、大津波が沿岸地域を襲った。

 すぐ緊急出動する車両や重機の準備に取りかかり、矢継ぎ早に指示を飛ばした。家に戻る余裕はまったくない。義父(76)を車いすに乗せてみんなで避難したはず。そう信じていた。

 翌朝、出動中の車両を確認するため駐屯地を出た。家があった方向には何もなかった。

 避難所名簿に名前がないことを知り「だめだ」と分かった。仕事の合間を縫って安置所や役所に掲示されたリストを見て回り、また任務に戻る。娘(14)の遺体と対面できたのは地震から10日後。中学校のジャージー姿で、顔は穏やかだった。

 妻と義父、義母(68)も同じ安置所にいた。家から1キロ以上ある場所で、4人ばらばらで発見されたのだと知った。妻と娘は秋田市の実家に運ぶことにした。

 たまの連休に一緒に帰省するのが楽しみだった。仏間に並べた2人のひつぎ。「なんでこうなっちゃったんだろう」。初めて泣いた。

 任務は多忙を極めている。いつも通りに振る舞う自分に、周囲も自然に接してくれる。いつか、落ち着いたら駐屯地の近くにアパートを借りるつもりだ。

 「誰もいない部屋に帰るようになったら、ひとりになっちゃったな、と思うんでしょう」。静かな声。ヘルメットには「まげんな(負けるな)!」の文字があった。
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