2011年04月13日
-今回の震災をどう受け止めたか。
「命が集団で持っていかれてしまった。いくら10メートルの防潮堤を造っても、それを超す自然の猛威がある。人間がいかにちっぽけな存在なのかを考えさせられた」
-医師として感じることは。
「医療が進歩して、ほとんどの病気が治るようになった結果、死を自分の実感として捉えられない人が増えている。自分が子どものころは、入院となると『死ぬのかもしれない』と恐怖を感じた。でも今は『退院はいつ?』。災害もそう。被害を最小限に食い止めることができると思っているけれど、実際には皆無にすることはできない。人間の力には限りがある。それならば、限りがある知恵と命を使って、いかに幸せに暮らすことができるのか、考えろと言われている気がする」
-その一方で人間には、より高い技術を求めて進歩してきた歴史がある。
「例えば海辺に住むのであれば、仕事場は海にあっても、寝る場所は高台にするとか、大勢が乗り込んで海辺から一気に高台まで逃げられるような避難装置をつくるとか、お金が掛かってもやったらいい。諦めるには科学の力が進みすぎている」
-山形には多くの被災者が身を寄せている。
「(山形に住んでいる)大人は、自分の子どもたちに『被災した人の身になって考えてみなさい』と言うだけで大丈夫。4~7歳ぐらいまでの子どもは、いい人たちだから。困っている人がいたら何とかしてあげようと自然に思う。小学4、5年生ぐらいになると、人を助けることを偽善的に感じてしまう。そうやって悪ぶるのも成長過程で、仕方のないこと。今回は山形の大人たちが、成長の途中で心にしまい込んだ優しさを取り戻す最高のチャンス」
-新しく出版した「なみだ」は子どもを失った親に向けたメッセージ。
「亡くなった人や、失われた家、思い出の品物、古里は、ずっと自分の中に生きている。初めは思い出すのもつらいかもしれないけれど、忘れずにいてあげてほしい」
-今後、被災地でも活動を考えている?
「病院として人材を派遣する。それとは別に、白衣は着ずに、お見舞いに行くような感覚で避難所を訪問して、被災者の声に耳を傾けたりと、草の根の動きをしようと思っている。一人一人ができることをやっていきたい」
-子どもたちに対して医療従事者が気を付けることは。
「具合が悪くなった時、大人なら大きいから目立つけれど、子どもは小さくて目立たない。そうして隅っこで少しずつ具合が悪くなっていく子どもがいるのではないかと心配だ。『食欲がない』『体がつらい』と自分では言えない子どもたちに、医師たちは大人の2倍、目を配ってほしい」
▽ほそや・りょうたさん 聖路加国際病院(東京)副院長・小児総合医療センター長。1948年河北町生まれ。東北大医学部卒。小児がん治療に長年携わる他、週末には実家の医院で診療を行っている。著書に「いつもいいことさがし」「生きようよ」「なみだ」、句集「桜桃」ほか。細谷さんの取り組みを追ったドキュメンタリー映画「大丈夫。」(伊勢真一監督)が都内などで上映されている。