2011年04月17日
被災者にちゃんこ鍋を振る舞う佐渡ケ嶽親方(中央、元関脇琴ノ若・尾花沢市出身)=宮城県気仙沼市
東日本大震災で甚大な被害を受けた宮城県気仙沼市。震災から1カ月以上がたった今も、荒涼としたがれきの山が広がる。約200世帯の8割が津波で家屋を失い、同市本吉町の仙翁寺に避難した大谷地区住民約250人を元気づけようと、大相撲の佐渡ケ嶽部屋は16日、現地で炊き出しを行った。力士たちから笑顔をもらった被災者たち。八百長問題などで苦境に立つ力士たちも被災者から「頑張って」と応援する言葉をもらい、「逆に勇気づけられた」と技量審査場所へ心を奮い立たせた。(報道部・田中大、佐藤裕樹)
「あまりにもひどい」-。この日早朝、千葉県松戸市を出発した佐渡ケ嶽親方(元関脇琴ノ若・尾花沢市出身)は、バスの車窓から目にした気仙沼市内に衝撃を受けた。破壊され尽くした家屋に言葉を失った。「みんなを元気にしてあげたい」と心がはやったという。
部屋の後援会長を務める二藤部洋おーばん社長が、佐渡ケ嶽部屋にこの日の活動を打診したのは1週間ほど前。共同出資会社「マークス」グループのスーパーが被災した気仙沼市で一緒に活動しようと提案し、佐渡ケ嶽親方が快諾。大関琴欧洲関、関脇琴奨菊関ら力士など計16人とともに気仙沼市に入った。
この日の訪問を事前に聞きながらも「本当に来てくれるのか半信半疑だった」という小野寺わか子さん(57)。バスから降りる佐渡ケ嶽親方らを見つけると、表情が一気に明るくなり、ほかの被災者とともに駆け寄った。
布団が敷き詰められたままの本堂や庫裏を回り「これで力をつけて」ともちを配った佐渡ケ嶽親方。琴奨菊関は男の子を肩車しながら、ほかの被災者に声を掛けて回った。「現役時代の相撲を覚えていますよ」「朝青龍との一番は見応えがあった」と佐渡ケ嶽親方に話し掛け、サイン入りの色紙を手に写真を撮った被災者たち。一緒に記念写真に収まった小学2年の斉藤詩織さん(7)は「おっきい」とうれしそうにデジタルカメラの画像に見入った。
炊き出しは、部屋直伝のみそ味、塩味のちゃんこ鍋計400人分を用意。佐渡ケ嶽親方も盛り付け役を買って出た。子どもたちにはお菓子もプレゼント。震災以降、お菓子を口にする機会が減ったという小学2年の三浦向陽(ひなた)君(7)は「一番大好きなクッキーがある」と喜んだ。避難所の代表を務める大内守雄さん(68)は「みんなの笑顔を見るのは久しぶりだった。本当に元気をもらった」と話した。
「被災地の現状は想像以上。(被災者が)少しでも元気になってくれたらうれしい」と琴欧洲関。琴奨菊関は「勇気づけようと思ってきた自分が、逆に励ましてもらった」と話し「相撲を一生懸命に取るしかない」。佐渡ケ嶽親方は2場所ぶりの場所開催となる5月の「技量審査場所」(東京・両国国技館)に向け「必死にけいこをし、私たちも頑張る」と誓った。