2012年03月08日
「震災復興のため少しでも役立ちたい」と語る梅津優子さん=宮城県岩沼市
悲しみ、不安、怒り…。さまざまな感情が一滴一滴、器にたまっていき、ある時あふれ出す。「被災地ではいま、忍耐が限界を超えた『幻滅期』に入っている人が多い」。本県から仙台保健福祉事務所岩沼支所に長期派遣されている保健師・梅津優子さん(36)は現状を憂える。だからこそ「被災者と地元職員のために少しでも役に立ちたい」。仙台の地に足をつけ、行政支援に日々励む。
■ここは日本か
梅津さんが初めて被災地を訪れたのは昨年8月だ。2週間の短期派遣。山梨県の保健師とチームを組んで、津波で甚大な被害を受けた宮城県南の沿岸部・山元町と亘理町で健康調査を実施した。
3月11日から時が止まったかのように、がれきが満ちたままの家屋。かろうじて残った自宅を修理し住んでいる被災者もいたが、周囲に人の気配は全くない。本当にここが日本なのだろうか。「それまで新聞やテレビで惨状を知っていたつもりだったが、実際に現場に立ち衝撃を受けた」
12月からは長期派遣の辞令を受け、仙台保健福祉事務所岩沼支所に勤務している。被災者宅を訪問し健康状態を調査したり、悩みを聴いたり。多忙を極める地元の保健師を支えるため調査結果のデータ入力や報告書作成もこなす。
「震災前の住宅地図と現状を見比べてショックだった。その地区を知らない人であれば、もともと荒野だったと思ってしまう。常磐線が通っているはずの場所にレールがなかったり…」。しかし、そこにはかつて確かに、温かな人々の暮らしがあった。
■忍耐は限界に
昨年秋以降、心の相談が増加した。大災害が起きたとき、人間にはどういう変化が起きるのか。「災害直後は『ぼうぜん自失期』、その後、被災地には同じ体験をくぐり抜けてきた連帯感が生まれ、温かなムードに包まれる」。しかし、避難所は次々と閉鎖され、人々はいずれ自宅に戻ったり仮設住宅に移り、現実に直面する。忍耐は限界に達して、不満が噴出する(幻滅期)。「震災から1年。いまは幻滅期に入っているとみられる人が多い」
眠れない。血圧が上がった。将来が不安だ。仮設住宅の訪問調査で人々は切実な悩みを吐露する。保健師として自分に何ができるのか。「まずは復興計画がどう進んでいるのか、どんな支援制度があるのか情報提供すること。そして、怒りや悲しみに耳を傾け、気持ちの整理が付くようにしてあげること」
祖母は石巻出身。学生時代、仙台に住んでいたこともあり、宮城とは縁が深い。任期は3月いっぱい。「もうすぐ震災から1年。当時の悲しみを思い出したり精神的に不安定になる『記念日反応』も懸念される。心の傷は簡単には癒えないと思うが、宮城の人たちが少しでも前に進めるようにお手伝いしたい」
(仙台支社・松田直樹)