震災1年-それぞれの思い(4) 宮城県警出向の本県警察官
2012年03月09日
Tweet
![]()
「被災した人たちのために精いっぱい頑張ろう」と誓い合う佐藤憲明巡査長(左)と武田敏英巡査長=仙台市・仙台南署
■できることを 武田敏英巡査長(29)は県警交通機動隊庄内分駐隊から今年2月、仙台南署に配属された。「1年前は10年たってもがれきはなくならないと思ったが…。人間の力はすごいと感じる」 大震災後、広域緊急援助隊員として岩手県や宮城県の沿岸部で交通規制や夜間パトロールに取り組んだ。冷たい強風が泥と砂を巻き上げ、ゴーグルとマスクなしでは立つことさえできなかった。用意された食事は数日前のおにぎり、賞味期限切れのパン。しかし、家を失い、家族を探し求め、疲れ切った表情で必死に歩く人々の姿を見ると、「自分にいまできることを尽くそう」。力が湧いてきた。 被災地には1週間交代でこれまで7回ほど入った。大学時代の4年間、仙台にいたこともあり、「もっと役に立ちたい」と、宮城県警での勤務を希望した。 佐藤憲明巡査長(30)も宮城出向を志願した一人。寒河江署から仙台南署に着任、武田巡査長と同じ地域課特別警ら第1係に所属し、任務に励んでいる。「義理の両親が石巻出身。親戚も多く、津波で家が流されたり亡くなった人もいる。学生時代を過ごした街でもあり、何とか力になりたいとずっと思っていた」 仮設住宅を巡回し、防犯広報しながら住民の悩みを聴く他、夜間を中心にパトロール。もちろん事件事故の発生時は現場に駆けつけ職務質問も行う。 ■支援「心強い」 仙台南署が管轄するエリアは若林区と太白区。沿岸部に位置する若林区荒浜では多くの人が津波の犠牲になった。「山形県警からは、震災直後から応援をいただき、荒浜でも活動してもらった。がれきはだいぶなくなり、最近は落ち着いてきたが、仮設住宅の住民同士のトラブルもある。孤独死も懸念される。山形県警の支援は大変心強い」。佐藤栄一副署長(57)は感謝する。 「仮設住宅を訪問して『山形から来てくれたの? わざわざありがとうね』と声を掛けられ、志願してよかったと思った」。佐藤巡査長は話す。「ようやく復興に携わる仕事を与えてもらった。心を傷つけないよう言葉遣いに気を配りながら、自分にできることを一生懸命やりたい」 震災で受けた悲しみや苦悩は一生消えないかもしれない。しかし、復興を願う思いは一つ。「山形チームが一丸となって、宮城県警と力を合わせ、被災した人々が少しでも元気になるよう頑張りたい」。武田巡査長は力を込めた。 (仙台支社・松田直樹)
東日本大震災 記事一覧
|
文字サイズ変更
山形新聞からお知らせ
|