東日本大震災

震災1年-それぞれの思い(5) 保育園で巨大カステラ作り

2012年03月10日
子供たちと一緒にカステラ作りに取り組む阿部早百合さん(中央)=宮城県東松島市
子供たちと一緒にカステラ作りに取り組む阿部早百合さん(中央)=宮城県東松島市
 9日午前9時すぎ、宮城県東松島市の赤井南保育所。ボランティア団体「ふらいパンダ」山形事務局長の阿部早百合さん(28)が呼び掛けた。「みんなでいっぱい仲良く卵を割っておいしいカステラを作ろうね」「はーい!」。遊戯室に元気な声が響く。

 ふらいパンダは震災後、子供たちに笑顔を届けようと有志が集まってできた復興支援グループだ。仮設住宅や保育園を訪問し、直径90センチの巨大カステラ作りを通して交流を深めている。この日は本県や東京、岩手から約20人が参集、特製の巨大フライパンを持ち寄り、子供たちと一緒にカステラ作りに取り組んだ。

■「何かしなきゃ」
 阿部さんは東日本大震災直後から、山形市や天童市でボランティア活動を開始した。「報道で津波の惨状を知り、何かしなきゃと思った」

 岩手県大槌町、陸前高田市、宮城県松島市…。かつて旅行で訪れた愛着のある土地が痛々しい姿をさらけ出していた。すぐにでも駆け付けたかったが「ガソリンもないし、いま行っても迷惑が掛かるだけ」と、山形でできることからスタートした。

 被災地を初めて訪問したのは約1カ月後。ボランティアの下見を兼ねて石巻市の日和山から廃虚と化した海沿いの街並みを見詰めたが、あまりの光景に実感が湧かなかった。しかし、翌週本格的な支援を始めて衝撃を受ける。想像を超える力でじゅうりんされた家々が目の前に迫ってきた。「本当にショックだった。津波の恐ろしさをあらためて感じた」

 以後、毎週のように被災地を訪れ、泥出し、家具の運び出し、がれきの撤去に励む。5月からは岩手県山田町に足しげく通った。片道約5時間の道のりだが「支援物資を分けてくれたり、お土産をもらったり。すごくあったかい人ばかりで」一気にファンになった。

 早くて、しかも丁寧な仕事ぶりから、阿部さんは被災地で「がれき女」の異名を取る。「がれき撤去ばかり好んでやってたから…。でも、結構気に入っています」。最近はニーズが減り、ふらいパンダの活動に軸足を置く。

 親の転勤で本県に転居する前、阿部さんは1995年の阪神大震災を経験している。当時は神戸市の小学5年生で、就寝中。「それまで地震を経験したことがなかったので何が起きたか分からず、巨人が家を揺らしていると思った。黒焦げになった長田区や倒壊した建物を間近で見た」

■見守り続ける
 この日訪れた赤井南保育所は津波で浸水被害に遭った。山口千寿子所長は「子供たちはお昼寝中でしたが、すぐに避難して無事。みんなつらい思いをしたので、こういう支援は本当にありがたい」と語る。子供たちは感謝の気持ちを込めて歌を披露した。「ありがとうのはながさくよ きみのまちにも ほらいつか」「ありがとうのはながさくよ みんながわらってるよ」

 震災からあす11日で1年。時は確実に移り、人々の記憶や風景を消し去っていく。ボランティアの減少も懸念される。しかし「本当の復興は10年20年も先。これからもずっと寄り添い、見守っていきたい」と阿部さん。笑顔あふれる思い出を一つでも多く-そう願いながら、はしゃぎ回る子供たちの輪の中に入っていった。
(仙台支社・松田直樹)
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