2012年03月10日
東日本大震災の発生からあす11日で1年がたつ。震災直後から間接的、二次的被害を中心に大きなダメージを受けた県内経済。多くの業種は予想以上のスピードで回復し、震災前の状況に戻っているが、観光業のようにいまだに大きな影響を引きずっている業種もある。震災後の観光、建設、製造、卸・小売り、農林水産の主な業種の現状を紹介する。
(「県産業界の現状」取材班)
【観光】風評打開へ「長期戦」
震災により、県内で最も大きな打撃を受けた業種が観光業。ひところと比べれば、状況は少しずつ良い方向に向かっているとはいえ、震災や東京電力福島第1原発事故の風評という目に見えない“敵”を相手に、長期戦覚悟での戦いを強いられている。
県が発表した県内の外国人旅行者受け入れ実績調査によると、2011年の県内への外国人旅行者総数は前年比51.6%減の4万561人。4月の9割減をピークに、12月まで毎月大幅な落ち込みをみせた。
原発事故による放射性物質の風評被害は、サクランボ観光果樹園の入り込みにも影響。昨年のシーズンは前年比4割減の約36万人にとどまった。
本県を代表する観光地・蔵王温泉も客足が戻らない状況が続く。例年スキー客でにぎわう冬季の落ち込みは深刻だ。蔵王温泉の空間放射線量は人体に影響のないレベルだが、子どもへの影響を心配する保護者らの意向で、特にスキー修学旅行が激減しているという。
蔵王温泉観光協会によると、今季のスキー修学旅行のキャンセル人数は、1月末までに延べ1万6400人に上る。旅館により減少幅は異なるが、ある女将は「利用料金を値下げしている旅館が多いがどこも厳しい。感触としては今も客が激減している」と話す。
そうした中、積極的に地元の魅力を発信し、誘客につなげようという前向きな動きも出てきた。蔵王温泉は今月、山形大の蔵王マイスター養成講座で学んだ案内人のガイドで夜の温泉街を散策する事業を前倒しでスタートさせた。また、先月には県内の観光関係者が初めてフィリピンの旅行博などに参加し、本格的な誘客活動を展開。激減した外国人旅行者の誘客を図るため台湾からのチャーター便なども相次ぎ企画されている。
原発事故に伴う観光業への風評被害の損害賠償をめぐり、東京電力と県内観光関係者との協議は継続中。米沢市だけは賠償対象地域になったが、先行きの見えない中で、関係者の不安はしばらく消えそうもない。
【建設】景況回復、人手不足も\r\n$p_unit 震災直後は、サプライチェーン(部品の調達・供給網)の寸断による資材や燃料の不足で、多くの建設現場がストップしたが、業界全体の景況はほぼ回復しつつある。公共工事の発注も例年より遅れたものの、昨夏ごろから本格化し回復を後押しした。
被災地の復旧事業が本格化するのに伴い、現地の人手不足が表面化。県内からも多くの職人が被災地に入っている。ただ、復興に向けた事業の動きはまだ弱く、県内の建設業への波及効果は少ない。
置賜地方の建設業者は「年が明けて、やっと仕事量が例年並みに戻ったように感じる」と胸をなで下ろす。資材関連の品薄感が落ち着くまで時間がかかった上、業界を取り巻く環境の厳しさも持ち直しの足かせになったという。被災地への復興予算の投入が本格化するが「逆に山形の公共工事が減少してしまうのではないか」との懸念も。現在は被災地での道路整備などにも協力しており「今後を考えれば、太平洋側での活動は一つの手」と考える。
山形市の住宅メーカーも「年末から年明けにかけて住宅需要が戻ってきた感がある」と話す。震災後の自粛ムードもあって新築の動きが鈍く、「リフォーム事業で何とか売り上げの落ち込みを抑えてきた格好」と振り返る。売り上げは前期並みというが、ここに来て住宅需要が持ち直しており「来期の見通しは明るいのではないか」と期待する。