県内、困った“満室御礼” 家族向け物件、避難者多い市は特に不足
2012年03月20日
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異動などによる引っ越しシーズンを迎え、家族向けアパートやマンションの空き物件が県内で不足気味となっている。福島第1原発事故後、福島県からの避難者を多く受け入れている山形、米沢の両市が特に少ないという。「優良物件は既に埋まり、提供は難しい」。例年の3月に比べ需給がアンバランスで、不動産業者からは困惑の声が聞こえてくる。「物件を選ぼうにも、どれも2~3人のキャンセル待ち。本当にここで生活できるのかと恐怖感すら覚えた」。異動内示を受けた2日後、米沢で不動産店回りをした40代の男性会社員は選択肢のあまりの少なさに驚いた。 県宅地建物取引業協会(山形市)によると、山形、米沢では家族向けの2DK、2LDKタイプに人気が集中し、空きがほとんどなくなっている。高橋一夫専務理事は「家族向けは南陽、天童、寒河江などでも見つけにくいようだ」。学生、単身向けはまだ余裕があるという。 県は1万3000人を超える避難者を対象に、家賃6万円の住宅まで無料で借り上げる支援制度を継続している。 建築住宅課によれば15日現在、制度を利用して入居、もしくは入居予定があるのは3668戸。山形市1682戸、米沢市825戸、天童市227戸と続き、山形、米沢など3市1町は既に受け付けが終わっている。70~100戸を避難者に提供している不動産業者が複数あり「例年に比べ相当数の物件が埋まっている感覚」(同協会)という。 限度額の6万円に近い物件は若い夫婦や転勤者のニーズと重なる。このため新生活で物件を探す人が希望より高めの家賃だったり、古い物件を選ばざるを得ない状況が生まれている。高橋専務理事は、県内は例年3月上旬から空きがあるとし「転勤で転出する人が増える3月末、4月にならないと、今年は良い物件は出てこないだろう」と話す。 一方、支援制度に協力した不動産業者に、県から支払われる仲介手数料の上限は2万円。通常の契約なら家賃1カ月分が一般的で、手数料収入がかなり減っている業者もある。 山形市内の業者は「物件が既に埋まっているから契約数自体が少ないし、手数料も例年に比べて6割くらい減った。3月は書き入れ時なのに…」と心境を吐露し、続けた。「でも、避難者に責任はない。できるだけの支援は続けたい」
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