東日本大震災

歩む~3.11、あの日から2年[4] 山形大、芸工大の「スマイルエンジン」

2013年03月10日
活動の打ち合わせをする中川遼太さん(左)と菊池遼さん=山形市・山形大
活動の打ち合わせをする中川遼太さん(左)と菊池遼さん=山形市・山形大
 2月下旬の土曜日、宮城県石巻市。青空のどこから落ちてきたのか、雪が風に舞い、建物のシャッターがガタガタと音をたてていた。

 東北芸術工科大3年の茅原ゆきのさん(21)は、山形大と東北芸工大の学生によるボランティア事業「スマイルエンジン山形」の後継となる「スマイルエンジン山形+(プラス)」の活動で、被災した工場を片付けていた。依頼主は建築資材の加工場を再開しようとしている男性。1日で工場はきれいになり、作業後、男性とじっくり話をした。震災当日のこと、何もできずに過ごした日々、再開に踏み出した思いなど。

 東日本大震災から2カ月がたとうとしていた2011年のゴールデンウイーク。スマイルエンジンのバスの第1便が石巻市に向けて出発した。以降、49回約1900人の学生を被災地に送り出し、今年1月26日の運行で活動を終えた。

 「『プラス』に移行したことで応えられる新しいニーズがある」と茅原さん。2月に始まったのが後継事業の「プラス」。この日、一緒に石巻を訪れたのは12人。数十人規模だったスマイルエンジンに比べて少人数になった分、細かな要望に対応できるようになった。被災者と話す機会も時間も増えた。今後も月1、2回のペースで被災地に向かう計画だ。

工場内を片付けるスマイルエンジン+(プラス)に参加した学生ら=2月23日、宮城県石巻市
工場内を片付けるスマイルエンジン+(プラス)に参加した学生ら=2月23日、宮城県石巻市
 11年夏から活動を続けている山形大4年の中川遼太さん(24)には忘れられない光景がある。昨年6月、石巻市の湊小。子どもたちが校庭を駆け回りサッカーをしていた。危険なく遊べるようにと、冬の終わりまでがれきを拾い集めた校庭だ。「サッカーができるようになったんだ」。うれしくなり、声を掛けた。

 だが、自分たちの作業が被災地の役に立っていると実感できる瞬間はそう多くない。片付けた工場が結局解体されたこともあった。日帰りボランティアにできる仕事は限られ、歯がゆさを覚えたこともある。中川さんは「みんなかなり悩みながら(活動を)やっていたと思う」と振り返る。

 「初心者でもできる、という支援の入り口をつくるのがスマイルエンジン。支援者の思いと被災地のニーズをつなげる役割がある」。活動を見つめ直す中で、同大研究生の熊谷周三さん(31)は、そう思えるようになった。事実、1月の最終便の際にも「やっと来ることができた」と打ち明ける初参加の学生がいた。「支援の入り口」という精神は、「プラス」でも引き継ぎたいと考えている。

 スマイルエンジンの活動は、学生たちが将来を考えるきっかけにもなっていた。医学部生の中川さんは当面、「プラス」の活動を続けたいと思っている。その先に「コミュニティーのことが分かる医者になる」という夢があるからだ。

 「行政、民間企業の力が行き届かない部分を埋めるNPOの重要性、資金繰りの苦労を知った」というのは同大4年の菊池遼さん(22)。春から進学する東北大の大学院で、震災を通して見えた社会問題を研究するつもりでいる。

 形を変えながら3年目に入る学生主体の支援活動。関わる若者一人一人が、新しい東北を創造する原動力になる。

(報道部・大坪千絵、江袋和貴子)
東日本大震災 記事一覧
[1] [2] [3] [4] [5] [6] [7] [8] [9] [10] [11] [12] [13] [14] [15] [16] [17] [18] [19] [20] [21] [22] [23] [24] [25] [26] [27] [28] [29] [30] [31] [32] [33] [34] [35] [36] [37] [38] [39] [40] [41] [42] [43] [44] 
文字サイズ変更
  • 小
  • 中
  • 大

県内7市発行メールマガジン登録無料

ふるさとだより

毎週木、金曜日配信中!

ニュース特集

スポーツ

教育・子育て

おでかけ

暮らし情報

twitter発信中

山形新聞からお知らせ

  1. 【2019年8大事業】
     山形新聞、山形放送の2019年の8大事業が決まりました。詳しくは、こちらから
  2. 【やましん公式FB】
     山形新聞社は、インターネット交流サイト「フェイスブック(FB)」の公式ページを新設しました。
     公式ページでは山形新聞のニュースのほか、本社からのお知らせなどを中心に紹介します。
     アドレスは、こちらから
  3. 【やましんe聞で動画視聴】
     読者限定の電子版「やましんe聞」で動画を閲覧できる新サービスを始めました。詳しくは、こちらから。
  4. ◆中学、高校の各種スポーツ大会の記録を紹介。検索機能も備えています。アクセス方法はこちら
  5. ◆探したい記事がきっと見つかる、山形新聞記事データベース。他社DB横断検索が便利な日経テレコンジー・サーチファクティバ
  6. ◆県外でも今日の朝刊が朝一で読める「お届け電子版
  7. ◆ニュース速報、高校野球、モンテ情報… 身近な情報を携帯で確認「モバイルやましん
  8. ◆故郷の話題をメールでお届け、ふるさとメール会員募集(登録無料)
山形新聞から
販売から