東日本大震災

歩む~3.11、あの日から2年[6] 夫が待つ「福島に戻る」

2013年03月13日
3月11日、被災地の様子を伝えるテレビ映像を見詰める田中陽子さん(仮名)。悩んだ末、福島県二本松市の自宅に戻る決断をした=山形市
3月11日、被災地の様子を伝えるテレビ映像を見詰める田中陽子さん(仮名)。悩んだ末、福島県二本松市の自宅に戻る決断をした=山形市
 福島県二本松市から息子2人と山形市に身を寄せている田中陽子さん(35)=仮名=は、4月から夫が待つ自宅に戻る決断をした。山形に残り、子どもの被ばくリスクを抑えるか、福島に戻り、家族全員で暮らして精神的な安定を求めるか―。原発事故さえなければ問われることのなかった理不尽な選択を迫られ、ようやく出した結論。「なぜこの二つをてんびんに掛けなきゃいけないの…」。アパートで震える声を絞り出した。

 東日本大震災後は、被ばくを気にする日々だった。長男(6)は当時4歳、次男(3)は1歳。真夏なのに厚着をして肌を露出せず、マスク姿。外での遊びを控える生活に、長男はヒステリックになっていた。

 二本松市には警戒区域の浪江町の役場機能が移り、避難者の“受け入れ先”にもなっている。住民の放射線への対応は「気にしない」「気にしながら暮らす」「自主避難する」など人によって分かれた。

 「子どもたちの健康を守りたい」。その一心で、田中さんは2011年7月、山形に避難した。仕事などの都合で夫は二本松に残った。週4日、パートのため、車で1時間半かけて二本松に通ったが、昨年3月末の自主避難者への高速道路無料措置廃止をきっかけに、パートを辞めた。

 除染を含め復興に向けた明るい兆しが見えてこない中、昨年春には「できるだけ山形にいよう」と決めた。だが、昨年末、その覚悟が揺らぎ始めた。「パパはいつ帰ってくるの?」「パパはどこ?」。うまく話せるようになってきた次男が繰り返し口にするようになったからだった。寝言で「パパがいなくなった」と涙を流す夜も増えた。

 家族全員がそろえば次男の気持ちは落ち着くものの、3人の生活に戻ると、反動のように夜泣きがひどくなる。寂しさで泣きわめく次男を、自分も寂しいはずの6歳の長男が「大丈夫だよ」と慰めていた。

 二本松市役所の空間放射線量は毎時0.4マイクロシーベルト前後。健康に影響がないレベルとされているが山形市の約10倍だ。自宅の庭では今でも1マイクロシーベルトを計測することもある。悩んだ末、子どもが望む家族一緒の暮らしを選んだ。夫が山形から福島の職場に通うことや、より安心できる場所への一家移住も検討したが、持ち家の売却、夫の再就職を考えると、二本松に戻るしかなかった。

 震災に伴う県内への避難者は7日現在で9982人と、昨年1月のピーク時と比べ約3800人減っている。田中さんは「二重生活で家計は常にギリギリ。山形を離れる避難者の中には、本当は『もっとこっちにいたい』と思っている人も多いはず」と語る。田中さんもメンバーに名前を連ねている「NPOりとる福島避難者支援ネットワーク」(佐藤洋代表)は今年2月、吉村美栄子知事に借り上げ住宅の期間延長や高速道路無料化を求め、要望書を提出した。

 山形の冬が終わる。田中さんが福島に戻る日が近づく。「放射線の影響にしても分からないことが多いはずなのに、なんとなく『大丈夫』という雰囲気になっているのが怖い」と打ち明ける。国策として進められた原子力発電が原因となった苦境。「除染作業は簡単には終わらないと思う。そうであれば、家族全員が安全な県外で一緒に暮らせる場所、仕事を準備してほしい」。強い口調で思いをぶつけた。

(報道部・鈴木悟)
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