東日本大震災

歩む~3.11、あの日から2年[7] 自主避難、尽きぬ苦悩

2013年03月14日
 「福島から避難してきたんです」―。以前は何の気なしに口にできた言葉だった。だが、震災から1年が経過したころから違和感を覚える人が出始めた。「今は、できれば言いたくない」

 天童市民文化会館2階にある避難者支援サロンで支援員として働く佐藤裕美子さん(41)=同市駅西3丁目=は、避難先になじんでいく中で新たな苦悩を抱える人々を知っている。佐藤さん自身も、福島第1原発事故に伴う福島県南相馬市の旧警戒区域からの避難者。現在は夫が福島に残り、小学6年と4年の子どもと暮らす。「避難所での生活を含め、こちらでは本当に温かく接してもらった」。避難者の多くが感謝の気持ちを抱く一方で、心の負担を感じている人が少なくないという。

 同じ南相馬の警戒区域外から自主避難している永井みなみさん(33)=仮名=は、被災後に数カ所を転々とし、2011年秋に母子3人で天童に落ち着いた。幼児を含む子どもを抱えての避難生活を支えるため12年4月に、慣れない接客業に就いた。仕事中は下の子を託児所に預ける。

 「放射能で子どもを汚したくない」との一心だったが、夫や義母は「そばにいてほしい」と繰り返した。自主避難をめぐる価値観の違いは鮮明になるばかり。去年秋に離婚が成立した。永井さんは言う。「被災離婚です」

 仕事で自分の車を使う。福島ナンバーを見られて、心無い言葉を掛けられることもある。「補償金がたくさん出るから働かなくてもいいのに」「相当もらったんでしょう」―。「またか」と、胸が痛む。福島の中でも、住んでいた場所などで補償金の額は大きく違う。自主避難の永井さんの場合は生活を支える額には程遠い。上の子は、学校で「補償金が出たんだって」と言われた。別の子どもは、金額まであからさまに言われたこともあった。親が教えているのだろう。「子どもの文房具や服を買えば『これは補償金?』と聞かれる。気晴らしの遠出の話も堂々とできない」。親切にしてもらったという思いは当然あるが、「山形の人って…」との言葉が出そうになる。

 佐藤さんは、避難者だと知られたくなくて福島ナンバーを変えた人も知っている。だが、問題は避難先での人間関係だけではない。避難者は帰省した際にも別の苦悩と直面するという。二重生活を送る家族を「避難できるだけ恵まれている」と見なす地元の風潮を感じ、思い詰めてしまう。

 避難者の中には、残してきた家族から「いつ帰ってくるのか」と帰宅をせかされる人は少なくない。だが、除染や復興が進んだとは思えない。戻るには、放射線量はもちろん教育や生活の環境整備など、全てが不十分だ。佐藤さんも永井さんも、避難生活の長期化を覚悟している。2人ともかなわぬと分かっていながら言わずにはいられない。「お金も何もいらないから、元の生活に戻りたい」。願いはそれだけだ。(天童支社・黒沢光高)
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