東日本大震災

歩む~3.11、あの日から2年[9] 男同士子の成長実感

2013年03月17日
父子避難生活を送る熊谷裕介さん(右)と恭平君。熊谷さんは恭平君の成長を日々感じている=米沢市避難者支援センター「おいで」
父子避難生活を送る熊谷裕介さん(右)と恭平君。熊谷さんは恭平君の成長を日々感じている=米沢市避難者支援センター「おいで」
 「避難することも、とどまることもどちらも正しい選択だと思う。ただ俺は子どもの将来の健康を一番に考えたんです」。熊谷裕介さん(49)は現在、自宅のある福島県伊達市を離れ、小学4年の長男恭平君(9)と米沢市の雇用促進住宅で暮らしている。苦労もある父子避難だが、子どもの自然な笑顔は何物にも変えがたい。

 熊谷さんと恭平君は2011年9月に米沢市での生活を開始した。東京電力福島第1原発事故が、まだ小さい長男の健康にどれだけ影響を及ぼすかが不安だった。「放射線の影響がはっきり分からない中で子どもを育てることはできなかった」。伊達市の自宅には、メーカー勤務の妻(46)と大学2年の長女(20)が今も残る。

 熊谷さんも会社勤めをしていたが、自分と妻の勤務先の安定性を考えた時、自分が仕事を辞めた方がいいと思った。「男としてプライドがあるし、嫌だと思ったこともある。だけど、子どもが安心して過ごせる環境が一番大事」。家族会議を重ね、自分が息子の世話をしようと決めた。

 県内への避難は母子世帯が多く、父子というのはまれなケース。家計を支えるために給食配送のパートを始め、妻にほとんど任せていた家事全般を担うことになった。洗濯物はなかなか片付かず、晩ご飯の後に食器を洗っていると午後10時近くになったこともある。時には子どもと一緒に寝坊したり。慣れない家事だが、恭平君は「お父さんの料理はだんだん進化している」と褒めてくれる。

 避難している母親同士の交流会が盛んに開かれる一方で、父親同士となると機会はまだ少ない。米沢に親せきや友人のいない熊谷さんだったが、長男の存在が周囲とのつながりをどんどん生んでくれた。「学校のPTAや野球のスポ少で、子どもだけじゃなく自分も自然に受け入れてもらえた。今じゃ、向こうにいた時よりも知り合いが増えたんじゃないかな」と笑う。

 熊谷さんには忘れられない言葉がある。米沢市万世小に初めて登校した恭平君が帰宅するやいなや「お父さん、今日マスクをしないで友達と校庭で遊んできたよ」と教えてくれた。「その時の顔が本当にうれしそうだった」

 「伊達の学校の校歌を忘れちゃったよ」と無邪気に話す恭平君を見つめ、熊谷さんは「複雑な気持ちだけど、今はまだ帰れない。だって何も進んでないんだから」とつぶやく。大好きな母親や姉と離れて暮らすことで、息子には寂しさを感じさせていると思う。それでも、不安を抱えたまま自宅に戻ることを今は考えられない。「もう慣れてきたし、電話しているから寂しくないよ」と気丈に話す恭平君が、頼もしい。

 男同士2人きりの生活を送る中で、長男の成長をはっきりと意識するようになった。「今は何の不安もなく、子どもに何でもさせてあげられる米沢の環境に感謝したい」。肩を寄せ合う父子は、深く強くつながっている。(米沢支社・伊豆田拓)
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