東日本大震災

歩む~3.11、あの日から2年[10] 「家族一緒」を第一に

2013年03月18日
日本地図を広げ、4月から生活する栃木県真岡市などの位置を確認する木村朱美さん(中央)、長女春花さん(右)、次女咲夏さん親子=最上町富沢
日本地図を広げ、4月から生活する栃木県真岡市などの位置を確認する木村朱美さん(中央)、長女春花さん(右)、次女咲夏さん親子=最上町富沢
 最上町赤倉小の体育館にあった七夕の短冊が風で揺れていた。東京電力福島第1原発事故の影響で福島県南相馬市から最上町に避難している町臨時職員の木村朱美さん(33)は、この中から1年生の次女の願い事を見つけた。「かぞくいっしょにくらしたい」―。しっかりとした筆跡に子どもの切なる思いを感じ、涙がこみ上げた。家族が離ればなれで暮らすようになって約1年半が過ぎた夏。決断した。「3月に最上町を離れ家族一緒に住もう」

 この町に避難してきたのは2011年3月17日。夫の会社員清泉さん(35)と長女春花さん(12)、次女咲夏(えみか)さん(7)の一家4人で近所の知り合いとともに、マイクロバスで北を目指した。夫はすぐに南相馬市の自宅に戻ったが、現在は栃木県真岡市に転勤となり、単身赴任している。

 夫に異動の辞令が出たのは昨年2月だった。「一緒に行こう」。夫はすぐにでも赴任地で家族と暮らすことを望んでいた。しかし、当時の木村さんの答えは「もうしばらく最上町に住む」だった。

 突然の大地震、そして原発事故―。状況を理解できないまま引っ越してきた影響もあり、子どもたちは最上町での生活になじむことに苦労していた。「あの時のことを思うと…」。傍らにはようやく生活に慣れた次女がいた。4月から赤倉小に通うことが決まり、心待ちにしていた。「体験入学楽しかった」。こう無邪気に笑う次女に「4月から別の所に引っ越すんだよ」とは言えなかった。

 夫が南相馬市の自宅にいる時は毎週末、3人で帰省していた。車で片道3時間。「頻繁に行き来できるぎりぎりの距離。このまま娘たちが義務教育を終えるまで最上町に住み続けようかとも考えた」と振り返る。しかし、転勤先の真岡市と最上町の距離は約400キロ。高速道路を使っても片道5時間は掛かる。

 一緒に住む方策を考えなければならないと感じた。「子どもにとってはつらいかもしれないが、いつかは決断しなければならなかった」と木村さん。「来年、長女が中学校に入学する。いいタイミングなのかもしれない」。次女の七夕の短冊を見て迷いが吹っ切れた。夏休みに入り、2人に打ち明けた。「パパが住んでいる栃木県に行こうか」

 真岡市の地図を見せながら、新しい学校の位置を示すなどして子どもたちの気持ちの切り替えを後押しした。現在は「新しい土地での生活を楽しみにしているようです」という。

 生まれも育ちも南相馬市だ。当然、地元に帰りたいとの思いは強い。「でも現状では無理。放射線による健康被害の可能性が払しょくできない以上、成長期の子どもを連れては帰れない」と複雑な心境を語る。

 最上町で過ごした1年半は特別な時間だった。「多くの人に支えていただきました」。引っ越しの予定日は28日。日ごとさみしさを感じるようになってきた。きっかけは原発事故からの避難だったが、「ここでの生活がそれだけ充実していたということなんでしょうね」。木村さんはほほ笑みながら、さみしさが募る理由を語った。(新庄支社・安達一智)
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