東日本大震災

歩む~3.11、あの日から2年[11] 決断「間違ってない」

2013年03月19日
南相馬市を離れ、家族5人での生活を選んだ横田健一さん(中央)。(右から)光輝君、理世ちゃん、真依さんの3人の子どもと妻との生活が何より大切だ=川西町上小松
南相馬市を離れ、家族5人での生活を選んだ横田健一さん(中央)。(右から)光輝君、理世ちゃん、真依さんの3人の子どもと妻との生活が何より大切だ=川西町上小松
 家族5人で一緒に過ごす時間。以前は当たり前だったものが、かけがえのないものだと感じる―。川西町の臨時職員として働く横田健一さん(37)は昨年5月、福島県南相馬市原町区から家族の暮らす同町上小松へ移ってきた。仕事や自宅、南相馬に残る知人のことを考えると自問自答は尽きない。しかし、今、子どもたちを見ていると思う。「間違ってなかった」

 横田さんの自宅は、東京電力福島第1原発から20キロほどの距離にある。津波は自宅から数百メートルの地点まで迫り、近所の風景は一変した。原発事故発生を知り、妻と3人の子どもと着の身着のまま家を出た。「大人も不安だった中で、子どもたちにはどれだけ不安を感じさせたんだろうと思う」。当てもなく車を走らせた当時を振り返る。

 福島県川俣町を経由し、たどり着いたのが川西町だった。避難所となっていた町農村環境改善センターで避難者の代表となり、約1カ月間過ごした。勤務していた東北電力原町火力発電所での仕事に加え、親戚と共に肉牛の肥育もしていた。当時は、川西にとどまることはできなかった。南相馬との間を行き来する日々が始まった。

 南相馬の自宅には帰宅しても一人きり。眠れない夜が続き、酒を飲む量も増えた。「一体何をしているんだろう」。家族と離れ、将来の見通しが立たない日々が約1年間続いた。県外に妻と子を避難させている知り合いが、離婚したという話を耳にした。本当に疲れ果ててしまった。

 川西に移り、家族と生活し始めた昨年5月以降、徐々にではあるが、気持ちは前向きになってきた。中学3年の長男光輝君(15)は甲子園出場を目指し、山形市内の高校へ進学を決めた。小学5年の長女真依さん(11)は友達とスキーを楽しんでいる。年中の次女理世ちゃん(5)は保育所が楽しくて仕方ないのか「あんまり早く迎えに来ないでよ」と言う。「こっちに来て本当に良かった」。妻と共に3人の姿を見ていると、心からそう思う。

 除染作業や被災者支援に関する法整備が順調に進行しているとは感じられず、今後の人生設計を描く上で障害になっている。避難したことで経済的には苦しくなった。国や県の支援がなければ、生活を再建しようにも限界がある。親族のいる南相馬や、実家のある双葉町には愛着があるが、何年後に戻ろうという話はできない。

 それでも、今は家族と笑い合いながら過ごせる。5人でいるからこそ、あの日と向き合える。「子どもは何年かすれば親元を離れていく。子育ての時間はいっときだからこそ、今はそのときを大切にしたい。家族がそろってるだけで幸せだと思えるんです」
(米沢支社・伊豆田拓)
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