東日本大震災

山形の福島っ子[1] 音楽がつなぐ絆、友情 「中学でも一緒に」山形で進学―葛藤の母、残る決断

2014年03月05日
ブラスバンド部の仲間たちと談笑する但木千愛さん(右から2人目)。福島には戻らず、山形での進学を決めた=山形市滝山小
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ブラスバンド部の仲間たちと談笑する但木千愛さん(右から2人目)。福島には戻らず、山形での進学を決めた=山形市滝山小 1
 東日本大震災の発生から間もなく3年。震災の爪痕は深く、東京電力福島第1原発事故の影響で福島県から山形県に避難する小中高校生は990人に上る(1月10日現在)。震災で突然の転校を強いられた子どもたちは山形の地でどんな思いで学校生活を送り、将来にどう希望を描いているのか。さまざまな葛藤を抱えながら勉強や部活動に打ち込む「山形の福島っ子」の姿を紹介するとともに、8回シリーズの最後の2回で避難児童生徒を対象に実施した本紙独自のアンケート結果を詳報する。(震災問題取材班)

 「本当にいいの? 友達に話してもいいんだね」。山形市滝山小でブラスバンド部に所属する6年但木千愛(ちなり)さん(11)は、母聡子さん(34)に何度も念を押した。中学からは福島に戻る予定で避難してきたが、友達と離れたくないという娘の希望を受け入れ、両親は「在籍するのは1年間かもしれないけど、山形六中に入学してもいい」と山形に残ることを許してくれた。

■ブラスバンド部
 千愛さんは2011年8月、2人の弟と聡子さんの4人で山形市に避難してきた。福島第1原発事故による放射性物質の影響を懸念しての決断。千愛さんは当時4年生だった。会社員で父親の哲也さん(40)は仕事の関係で自宅のある福島市に残った。「同級生でも(福島県外に)避難している子が何人かいた。親に山形に行くと言われた時は『仕方ないのかな』と思った」と振り返る。

 初めての転校。福島からの避難者はクラスには自分1人だった。元来もの静かな性格。自分から同級生にうち解けていくことができず、転校当初は「福島に戻りたい」と聡子さんにこぼすこともあった。

 転機は4年生の終わりに訪れた。ブラスバンド部への入部だ。幼いころから歌うことが大好きで、楽器を演奏してみたいとの思いがあった。同部は10、11年と2年連続で全国大会に出場した強豪。練習はきついが、仲間と協力してマーチングを完成させることが楽しかった。担当はトランペット。夏休み中も共に練習に励む中で、親友もできた。

 顧問の色部敏宏教諭(47)は千愛さんの変化を間近で見てきた。「最初はおとなしかったが、部活を通して少しずつ明るくなっていった」。6年生になった時には、千愛さんの思いは固まっていた。「今の友達と離れたくない」

■気持ちに正直に
 秋田市で昨年10月に開催された小学校バンドフェスティバルの東北大会。前回の銀賞を上回る金賞を獲得したが、惜しくも全国大会出場は逃した。帰りのバスの中で、部のみんなで泣いた。「6年生で最後だからどうしても全国に行きたかった」と千愛さん。中学で同じ仲間と再び全国を目指したいとの思いが募った。

 聡子さんは昨夏、娘の気持ちを知って葛藤した。山形と福島の二重生活で経済的負担が家計に重くのしかかる。「途中で福島に帰ることになるかもよ」。何度も話し合ったが、娘の気持ちは変わらなかった。夫は「娘のしたいようにすればいい」と言った。悩んだ末に生き生きと学校生活を送る娘の姿を思い、決断した。「山形に来たのは私の意思。今度は娘のしたいようにさせたい」。避難者を対象にした住宅の借り上げ期間が続くうちは、山形に残ってもいいと考えるようになった。

 「うれしい。これからも仲良くしようね」。ブラスバンド部の部長で同級生の丹羽夏葵さん(12)は千愛さんが山形に残ると聞いて喜んだ。2人は今春、山形六中に進学したら吹奏楽部に入るつもりだ。昨年の吹奏楽コンクール東北大会で、同部は県内の中学校では唯一金賞を受賞した強豪。「一緒に全国大会に出場したい」。親友との大舞台出演を夢見る。

 「お父さんもお母さんも頑張っているから、いつかは戻らないといけないのは分かる」と千愛さん。それでも「今は山形の友達と勉強や部活を頑張りたい」と自分の気持ちに正直に向き合う。
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