東日本大震災

山形の福島っ子[3] 一家4人で鶴岡に避難、市内の高校に進学へ

2014年03月07日
ボランティアの講師から数学を学ぶ小野優斗君(左)。今春、市内の高校に進学する=鶴岡市総合保健福祉センター
ボランティアの講師から数学を学ぶ小野優斗君(左)。今春、市内の高校に進学する=鶴岡市総合保健福祉センター
 期待に胸を膨らませていた福島での中学生活は東日本大震災にのみ込まれた。進学を目前に控えた小学6年生の春だった。震災直後の2011年3月、知人を頼りに一家4人全員で鶴岡市に避難した。見知らぬ土地、ゼロからの人間関係に対する不安。先の見えない生活を乗り切る支えとなったのは、震災をきっかけに生まれた絆だった。

 鶴岡市総合保健福祉センターの一角。避難者を対象にした月1回の学習会に子どもたちが集まってきた。中学3年生になった小野優斗君(15)は今春、市内の高校に進学する。ボランティアの講師と机を並べ、数学の問題に取り掛かる。「将来は大学に行きたいし、高校で勉強が遅れないようにしたい」と高校生活の準備を進めている。

 実家は福島県いわき市の沿岸部。東京電力福島第1原発から約60キロ離れている。震災による大きな被害はなかったが、原発事故を受け、いったん同県郡山市にある祖父の家に避難した。その後、より安全な場所を求め、家族で鶴岡市に移った。

 震災前は地元の友達と一緒に中学生活について夢を語り合った。友達と離れることは考えられなかったが、原発問題解決のめどが立たず、そのまま避難先の鶴岡市で中学進学を余儀なくされた。震災で転校した子どもが転校先でいじめに遭ったケースを新聞やテレビで知り、入学前日は心配で気持ちが落ち着かなかった。

*「普通の関係」に安心
 11年4月、不安に満ちた中学生活がスタートしたが、クラスメートが声を掛けてくれたことですぐに周囲と打ち解けることができた。被災者だからといって特別視しない「普通の関係」に安心したという。ただ「庄内弁は独特。福島とは言葉がだいぶ違うので最初のころは大変だった」と振り返り、「今では楽しい思い出」と笑顔を見せる。

 部活動は友達に誘われてバレー部に所属した。1人だけいた上級生が引退してからは1年生7人で一からチームづくりを進めた。部員の勧誘など部存続のため熱心に活動、2年時には県大会出場を果たし、仲間と絆を強めた。3年生となって部活を退いてからは、高校進学に向けて勉学に専念。鶴岡で多くの友達ができたほか、学校説明会で気に入った学校が見つかったことから、市内の高校への進学を決意した。

*将来体験生かす
 震災に負けず、前を向く息子の姿に母(48)は「初めのころは生活するだけで精いっぱいだったが、地域になじんで友達と楽しい日々を送っている息子に元気をもらった」と話し、「つらいことも山ほどあったと思うが、よく頑張ってくれている」とねぎらう。

 将来のことはまだ決めていないが、震災を体験した人間だからこそできる仕事をしたいと考えている。

 「震災が起きて良かったとは思わないが、普通ならできない経験ができたし、新しい友達と出会うことができた。人の役に立てるような人生にしたい」

 避難先で生まれたつながりを糧に、震災を乗り越えて新たな一歩を踏み出す春が到来した。
(震災問題取材班)
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