東日本大震災

山形の福島っ子[5] 親元離れ全力疾走

2014年03月09日
けがや病気を乗り越え、強豪の陸上部でチームメートを引っ張る石河遥香さん(中央)。最終学年での飛躍を誓う=米沢市・九里学園高
けがや病気を乗り越え、強豪の陸上部でチームメートを引っ張る石河遥香さん(中央)。最終学年での飛躍を誓う=米沢市・九里学園高
 思い切り外を走ることのできる春が待ち遠しい―。インターハイ(IH)へ37年連続で選手を送り出している県内屈指の陸上強豪校・九里学園高(米沢市)で、短距離種目に取り組む2年石河遥香さん(17)は福島県いわき市の出身。中学時代に経験した震災、そして高校入学後のけがや病気との闘いを乗り越え、集大成となる最終学年でのIH出場を目指している。

 いわき市平二中2年時に震災に遭った石河さん。東京電力福島第1原発事故が発生した直後、母満枝さん(45)の実家がある米沢市に10日間ほど身を寄せた。その後は自宅に戻ったが、練習は基本的に室内だったほか、外で走る際はマスクを何重にも着けなければいけなかった。走りたくても思うように走れない日々が続いた。

 状況を心配し、満枝さんは自身がOGである九里学園高の本田米子陸上部監督(67)恒一コーチ(68)夫妻に相談。快く受け入れられた石河さんはその後、たびたび同校で指導を受けるようになり、中学3年時の東北大会では200メートルを25秒94で制した。

*母の後押し受け
 福島県内の複数の高校から推薦入学の話が来たが、石河さんは九里学園を選んだ。監督、コーチ、顧問の原田隆弘教諭(29)へ厚い信頼を寄せていたことと、満枝さんの後押しが決め手になった。

 高校入学後は好調で、走るたびに記録が伸びた。「走るのが楽しくて楽しくて仕方なかった」。親元を離れての下宿生活だが、同世代の女子生徒がいることで、共に有意義な時間を過ごしている。「下宿先のおじさんとおばさんが良くしてくれるおかげで、落ち着いて暮らせる」

 順調にタイムを縮めていたが、高校1年の秋からは立て続けに困難に見舞われた。県の新人大会100メートル決勝で、スタート直後に左脚を肉離れ。2カ月ほどのリハビリ生活が続いた。けがが癒え冬季練習に入ったが、2年の春先に再び体に異変が起きた。全身がだるく、階段を数段上っただけで息が上がる。甲状腺機能亢進(こうしん)症のバセドー病と診断された。

*チームを引っ張る
 現在は服用する薬が効いており、体調は改善。だが、けがと病気で思い切り走れない8カ月間は本当につらかった。毎日のように満枝さんに電話した。「いわきに帰りたい」と涙が出る時もあった。それでも指導者とチームメート、家族の支えで乗り越えることができた。

 現在は女子の部長としてチームをまとめる。実力だけではなく精神的にも周囲を引っ張る存在になった。チームメートの2年吉田菜穂さん(17)は「遥香は本当に気持ちが強いし、信頼できる」。40年以上にわたって陸上部を指導し続ける本田監督も「この子はとにかく陸上が好き。ここまでよく腐らずに頑張ってきたし、苦労を重ねた分、確実に強くなっている」と評する。

 「ようやくつらい時期を抜けられた。ここまでみんなで頑張ってきたし、今年は全国で勝負したい」と力強く語る石河さん。まもなく長い冬が終わる。春が訪れれば、待ちに待った競技場での練習が再開する。トラック上を全力で駆け抜けることで、力をくれた周囲の人たちへ感謝の気持ちを表すつもりだ。
(震災問題取材班)
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