東日本大震災

刻む3・11~震災4年「あの時」の県内(5) 米沢市立病院―手探りの放射線量測定

2015年03月09日
避難所となった米沢市営体育館アリーナ。市が開設した避難所には最大593人が身を寄せた=2011年3月15日
避難所となった米沢市営体育館アリーナ。市が開設した避難所には最大593人が身を寄せた=2011年3月15日
 「私たち、被ばくしたかもしれない」。空気が張り詰めた。想像もしなかった事態にさらされた。東京電力福島第1原発で水素ガス爆発が起きた翌日の13日夜、福島県からの避難者が米沢市立病院に詰め掛けた。その人たちは疲れ切った様子で不安を打ち明けた。受け入れ側は戸惑った。十分な機器、知識はない。それでも、引くことはできなかった。米沢市は県内における原子力災害避難者支援の最前線となった。

腹をくくる
 病院には、簡易の放射線量測定機器が1台あるのみだった。「基準値はどれくらいなのか」「着ている衣類はどうするのか」「体の除染はどう行うのか」-。誰も明確に分からないまま、数値が比較的高い避難者にシャワーを浴びさせるなどの除染を行った。

 「万が一、重度の被ばくが分かれば医療行為が必要になる」。対応に当たった医師らは腹をくくる。「問題がなければ本人の安心につながる。だからやろう」。当時、市危機管理室長を務めていた東海林博志さん(51)は病院の判断を振り返る。手探りだった。資料や関係団体から情報を集めながら対応を考えた。

 日を追うごとに原発の状況は深刻化していた。南相馬市、大熊町、双葉町、浪江町…。避難指示区域の人々はできるだけ遠くを目指した。市立病院を訪れる避難者も増加し、14日には66人に上った。

 相次ぐ測定の依頼は病院の業務を圧迫した。市内は県内最大の震度5強の揺れに見舞われ、病院は一部設備の使用を中止した。物流が止まり、食料や燃料が不足する恐れもあった。

 悩ましいのは不安の広がりだった。えたいの知れない「放射能」に抵抗感を抱く市民もいた。避難者と一般外来の出入り口が一緒でいいのか-。そう懸念する利用者がいた。検査しないと泊められない-。宿泊施設に告げられ、病院を訪れる人もいた。原発からどれだけの放射性物質が飛散したのか、明らかではなかった。過剰なまでの反応を耳にし、市の担当者は人々の動揺を感じた。

 原発のない本県。米沢市の地域防災計画は、原子力災害や他県からの避難者の流入を想定していなかった。福島県からの受け入れ要請も届いておらず、今後、国の支援がどうなるかも分からない。朝に決めた方針が午後には通用しなくなることも多々あった。

市民が後押し
 見通しが立たない中、担当者は対応に駆け回った。「困っている人が目の前にいる。助けよう」。その一心で市内の団体や企業が既に動きだしていたからだ。「市民に後押しされた」。東海林さんは振り返る。病院も混乱の中を乗り切った。病院事務局の和田晋総務課長(49)はかみしめる。「マニュアルがなくても、スタッフが迅速に動いた。医療の従事者としての使命を全うした」

 米沢市は14日に避難所を開設。15日には収容能力約500人の市営体育館アリーナを開放した。体育館を避難所にすることも、数百人の避難者を抱えることも、初めてのことだった。最大593人を受け入れた避難所は、5月18日に閉鎖。その後、みなし仮設などへの入居で市内には最大3895人が身を寄せた。現在も約千人が先の見えない生活を続けている。

 市は2013年に地域防災計画を改訂。原子力災害や避難の長期化などについて盛り込んだ。市立病院も災害対策マニュアルを見直し、放射線量の測定など対応をまとめた。
(3・11取材班)
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