東日本大震災

刻む3・11~震災4年「あの時」の県内(1) 山形空港―24時間化、大量の航空機離発着

2015年03月04日
 水平線から迫る真っ黒い津波が街をのみ込んだ。想像を絶する惨禍に、日本中が被災地を憂い、悲しみに包まれた3・11。マグニチュード(M)9.0の巨大地震は岩手、宮城、福島の3県をはじめ東日本各地に深刻な被害をもたらした。その影響は本県にも及んでいた。停電、物流の寸断…。県民もそれぞれの場所で立場で対応を迫られた。2011年の東日本大震災の発生から間もなく4年。あの時、県内では何が起きていたのか―。語られなかった真実、忘れてはいけない出来事を、あらためてたどる。(3・11取材班)

被災地からの避難や、安否確認のため被災地に向かう人たちであふれた山形空港=2011年3月14日
被災地からの避難や、安否確認のため被災地に向かう人たちであふれた山形空港=2011年3月14日
 この日ほど夜明けが待ち遠しい日はなかったかもしれない。オレンジ色の日差しが関山の稜線(りょうせん)に浮かび、次第に滑走路を照らす。その光景に一晩中、空港内で待機していた関係者は気持ちが和らいだ。「大丈夫、使える」。山形空港で震度5弱の揺れを観測してから約16時間後。滑走路の閉鎖を解除した。ほっとしたのもつかの間。空港周辺の上空には既に各県から被災地の応援に駆け付けた防災ヘリが10機近く待機していた。

端末トラブル
 空港内の管制塔で離発着する航空機やヘリに対し、飛行に必要な情報を提供する国土交通省東京航空局の航空管制運航情報官。「すごいことになった」。朝一番で空港に駆け付けた小森賢一運航情報官(39)=東根市=は、そう思った。ある程度、想定していた事態だったが、震災の影響で飛行計画を表示する端末が使えなくなる回線トラブルも重なった。着陸を希望する機の現在地を知るすべは無線交信のみ。管制塔内にいた同僚の運航情報官は叫んだ。「紙とペンを持ってきて」

 数人が連携して着陸予定時間や便名、型式の情報について、広げたコピー用紙に書き込んだ。頭の中で空港周囲の地形をイメージし、紙に記した情報から「現在、寒河江上空」などと機影を当てはめ、下ろす機種の順番を決めた。パイロットとの交信は原則、英語だが、母国語でも問題ない。この時ばかりは日本語が多くなっていた。最初のラッシュは2、3時間で終了した。ミスはなかった。「乗り切った」。端末のトラブルは昼すぎに復旧した。

震災発生後の山形空港は被災地に向かう各県の防災ヘリや自衛隊機、米軍機に加え、航空会社も臨時便を増発し、過密ダイヤとなった=2011年3月14日
震災発生後の山形空港は被災地に向かう各県の防災ヘリや自衛隊機、米軍機に加え、航空会社も臨時便を増発し、過密ダイヤとなった=2011年3月14日
無線音量最大
 山形空港は震災翌日から24時間化され、発着便数も日を追うことに増えていった。太平洋側3県の被害状況が明らかになるにつれ、防災ヘリに加え、民間航空会社も臨時便を増発。13日から米軍機も使うことになった。夜になるとガラス張りの管制塔内は冷え込んだ。毛布1枚を体に巻いて暖を取った。必ず気付くよう、無線の音量は最大。夜中に米軍機からの交信が突然入ることもあった。

 「お気を付けて」「ご無事で」。離陸する機に必ずこの言葉を掛けた。被災地に向かうヘリに対しては機影が見えなくなるまで関山の方角を見つめた。大量の航空機を滞りなく離発着させることが一人でも多くの命を救い、一人でも多くの人に物資を行き渡らせることになる―。運航情報官はもちろん空港ビルで勤務する旅行会社の地上スタッフや売店の職員も含め「山形が被災県を救う」という気概で一丸となっていた。

 人であふれる空港ビル内の様子を連日、目にした。年末年始や夏休みの時とは、同じ混雑でも緊張感が全く違った。被災地から避難する人、安否確認などのため被災地に向かう人…。誰もが不安や絶望、疲労の色を濃くしていた。

 あれから4年の月日がたつ。現在の山形空港に当時の喧騒(けんそう)はない。「別次元の状態だった」。小森運航情報官はしみじみと振り返る。

 仙台空港が復活するまでの約1カ月間、山形空港は、間違いなく全国と被災地をつなぐターミナルだった。「風化させたくない。あの時の山形空港を語り継いでいかなければならない」。被災地から遠い地域では震災が過去のものになりつつある中、小森運航情報官は強調した。「それが経験した者の務めと考える」
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