東日本大震災

東日本大震災から5年~忘れない3・11[6] 県内避難者の選択(上)示されたリミット

2016年03月06日
署名を求める文書を作成する藤田亜希子さん。「全ては子どもたちの笑顔のため」と考えている
署名を求める文書を作成する藤田亜希子さん。「全ては子どもたちの笑顔のため」と考えている
 帰還か、移住か、それとも―。東京電力福島第1原発事故で、避難指示の出ていない区域から本県などに身を寄せた福島県の人々は岐路に立たされている。生活の支えだった借り上げ住宅の無償提供が2016年度末で打ち切られるためだ。一方、津波との二重苦に見舞われた沿岸部の避難者も、生活の礎を取り戻そうと模索している。事故から約5年の歳月が流れた。仕事や子どもの進学など、家庭の事情も変わってきている。家族にとって何が最良の選択なのか、それぞれが歩むべき道を探している。

 「決めなければならないのは分かっている。でも…」。パート社員の女性(40)はそう言うと、長いため息をついた。あの年の5月、子ども3人を連れて福島市から米沢市に自主避難した。地元の会社に勤める夫は残り、週末だけ米沢に来る二重生活が始まった。

 夫とは顔を合わせるたびに口げんかになった。お互い疲れていたように思う。「お父さんは怒ってばっかり。もう来なくていい」。子どもの言葉が胸に刺さり、離婚も考えた。3年後、夫は米沢市内の拠点に配属になり、家族5人の生活に戻った。だが、昨年、再び福島県内の拠点へ異動に。今は約1時間半をかけて米沢から通勤している。

 一番下の子どもは今春、小学校に上がる。「戻ろうか」。借り上げ住宅の無償提供打ち切りが確定的になると、夫が漏らした。しかし、放射線量が気になる。

 測定器を買い、福島の自宅周辺を定期的に計っている。まだ原発事故前の10倍近い。福島県内全ての子どもが対象の甲状腺検査で、がんの確認は増えている。専門家の説明は「放射線の影響は考えにくいが、完全に否定できない」というものだ。「何を信じていいのか分からない。後で影響があったとなってからでは遅いんです」

 夫とは最近、将来の話をしていない。互いに避けている。またけんかになるのが分かっているからだ。

 線量への懸念
 米沢市内で英会話講師をする女性(43)の自宅は郡山市内にある。震災の4カ月後、3歳の息子と2人で避難してきた。夫は自営業のため一緒に来ることはできなかった。

 小学校に入った息子は夜にしくしく泣くことがある。学校でつらいことがあったようだが事情を話したがらない。2人だけの生活。父の役割もしなければと厳しく接することがある。そんな時、父親という「逃げ場」が必要と感じる。家計的にも家賃を払うのは厳しい。

 それでも踏み切れない。やはり理由は放射線量の問題だ。震災前に仲良くしていた郡山の友達とは今、音信不通だ。以前「いつまで避難しているの」「大丈夫よ」と声を掛けられた。放射能に対する感覚に隔たりを感じ、連絡を取ることはなくなった。「戻るにしても残るにしてもベストではなく、どちらがよりましかの選択。やり切れない」。

 「福島に残る人も、逃げた人も同じように支援すべきだ」。福島県中通りに自宅がある会社員の女性(57)は震災の約1年後、4人の子どものうち、小学6年と中学1年だった下の2人と米沢に来た。家族バラバラの生活の中でやるせなさが募る。「国と福島県が責任をなすり付け合っているようにしか見えない」

 支援継続願う
 震災5年を前に、県内の同じ境遇の人たちの思いを結集しようという動きがある。福島市から山形市に小学生の子ども2人と避難している薬剤師の藤田亜希子さん(43)はその先頭に立つ。署名活動をし、住宅支援継続の切実な願いを国や福島県に届ける考えだ。

 震災前年の12月に家を新築した。家族そろっての新居での生活は半年で途切れた。住宅ローンを抱え、6月から夫が残り、藤田さんは山形から職場のある福島に通う生活を始めた。

 「全ては子どもたちの笑顔のために」。そう考えている。福島での生活をイメージしてみた。浮かぶのは子どもへの放射能の影響が心配で暗い顔の自分だ。「母親が笑っていなければ、子どもが笑顔でいられるわけがない。だから避難し続ける。だから住宅支援の継続を求めたい」

借り上げ住宅 災害救助法に基づき、民間アパートなどを仮設住宅として提供する支援。東京電力福島第1原発事故をめぐり、福島県は避難指示の有無を問わず一律に無償提供してきた。期間は原則2年だが、特別措置法により1年ごとに延長。同県は昨年、4回目の延長を国に申請し2017年3月まで延ばしたが、「応急救助から次の段階に進む時期」として自主避難に対する無償提供終了を決めた。
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