東日本大震災

東日本大震災から5年~忘れない3・11[9] 教訓をどう生かす(上)企業編

2016年03月09日
東日本大震災後にBCPを策定した半沢鶏卵。計画の実現や見直しに向けて検討を進めている。写真は薫製卵の加工場=天童市・同社
東日本大震災後にBCPを策定した半沢鶏卵。計画の実現や見直しに向けて検討を進めている。写真は薫製卵の加工場=天童市・同社
 直接的な被災がほとんどなかった県内だが、停電や交通網の寸断、燃料・原材料不足は企業活動に打撃を与えた。燃料不足は企業だけでなく、移動手段を車に頼る県民の日常にも暗い影を落とした。東日本大震災後、関心が高まった企業の事業継続計画(BCP)の策定や燃料の安定確保対策は、進んだのだろうか。

■浸透いまいち
 「東日本大震災がきっかけだった」。卵商品を扱う半沢鶏卵(天童市)の半沢清彦社長(57)は記憶をたどるように話した。BCPの策定に至った経緯だ。「これまでは経営に必死。緊急時の備えまで頭が回らなかった」

 震災で設備に被害はなく、停電の復旧とともに操業を再開。ただ、日々の業務の中で新たに芽生えた思いがあった。「もし設備が壊れていたら…」。取引先に迷惑は掛けられないと、県企業振興公社(山形市)の勧めもあり、2012年2月にBCPを策定した。

 計画の主な内容はパック詰めや加工、保管倉庫などの代替施設の検討、事業工程の一部を頼める同業者の選定、出社できない事務員の在宅勤務など。「すぐできる内容ばかりではないが、万が一に備えたい」。半沢社長は力を込める。

 内閣府によるBCP策定に関する実態調査によると、震災前の09年度は大企業の策定率が27.6%、中堅企業は12.6%。震災後の11年度は大企業45.8%、中堅企業20.8%と、意識の高まりがみられる。

 大半が中小企業の県内はどうか。BCPに関するセミナーを開催する同公社の担当者は「県内で浸透しているとは言い難い」とこぼす。「確かに震災で関心は高まった。しかし、地方経済の厳しさから仕事をこなすのに手いっぱいで、どうしても後回しになる」

 県内経営者に取材すると「人も金も時間も割けずに策定を断念した」との声のほか、「火災の防災計画と違って数十年に1度の大災害を想定するのは難しい。つくっても意味があるのか」との意見が聞かれた。

 同公社の担当者は「想定外の事態が起こっても備えは大切。BCPの策定は自社の強みを見直すきっかけにもなる。まずは身の丈にあった計画づくりから進めてほしい」と訴えた。

■「中核SS」増
 一方、燃料の安定確保対策はどうか。資源エネルギー庁によると、震災時、広範囲で燃料不足に陥った理由は▽東北の重要供給拠点だった宮城県など太平洋側の製油所、油槽所が被災し、関東の製油所も稼動停止した▽交通網の寸断で外からの輸送が困難だった▽広域で停電し、在庫の放出に支障を来した―など複数ある。

 石油元売り最大手JXホールディングスと業界2位の出光興産の本県への輸送ルート(平時)は、震災前と同じ太平洋、日本海双方の複数拠点からのルートに戻っている。太平洋側に重要拠点が多い構図は変わらない。県石油商業組合、県石油協同組合によると、太平洋側からの方が輸送効率が良いほか、日本海側は海が荒れた際にタンカーが入れないなどの課題があるためだ。

 しかし、どこでどの規模の災害が起きたら、どう燃料を生産し、運ぶのかというシミュレーションが元売りと販売店との連携で繰り返され、多様な想定下での対応計画が策定されているという。政府が費用助成したこともあり、自家発電装置や大型タンクを備えたガソリンスタンド「中核SS」は全国約1600カ所に増え、県内でも22カ所(両組合)に設置された。

 両組合の遠藤靖彦理事長は「中核SSでの訓練を毎年重ねているほか、中核SS以外でも、独自に自家発電機を設置する所が多い。生活に欠かせない燃料を供給するための備えは進んでいる」と力強く語った。
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