食と農を問う

みどり農園(酒田) 食べる紅花 庄内で生産、加工

 最近、健康食材として注目を集めている県の花ベニバナ。産地の大半は内陸だが、庄内でも生産の動きが出てきた。酒田市の「株式会社みどり農園」はベニバナの栽培と加工食品の開発に取り組んでいる。昨年12月に設立したばかりの小さな会社だが、紅花を活用した観光振興も視野に入れ、本県における「紅花産業の復活」という大きな目標を掲げている。
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天日で乾燥を繰り返して製品の原料とするベニバナ=遊佐町十里塚
天日で乾燥を繰り返して製品の原料とするベニバナ=遊佐町十里塚
 みどり農園は環境保全事業を手掛けるエルデック(酒田市)のグループ会社。遊佐町十里塚の砂丘地と、鳥海南麓(なんろく)に位置する酒田市泥沢の開墾地に計200アールの農場を所有する。エルデックが3年前に自社製品の有機肥料を使ったベニバナ栽培に着手。本格的な商品開発事業に参入するため新会社をつくった。社員は中村聡社長(38)を含めて5人。花摘み作業で忙しい時期などはパート従業員を雇用している。

 ベニバナは抗酸化作用に優れ、老化やがん、脳卒中、心臓病、認知症などの予防につながることが科学的に実証されている。みどり農園は2010年度の県農林水産業創意工夫プロジェクト支援事業を活用し、県産ベニバナを100%使ったサプリメントを開発、今年5月に発売した。酒田市や遊佐町の観光施設、インターネットなどで販売している。

 なぜ、サプリメントが第1号商品となったのか。企画開発部門を担当するみどり農園参事の越田淳一さん(44)はこう説明してくれた。「健康維持に役立つ作物で、山形らしいものはないかと探していた時、偶然ベニバナと出会った。調べていくうちに乾燥させた花は『こうか』と呼ばれ、血行促進作用がある生薬として薬用酒や漢方薬に用いられていることが分かった。ベニバナの機能性に着目した健康食品を開発しようと思った」

 1瓶180粒入りで、製造は京都府の製薬会社に委託している。1粒のサプリメントを作るには1房のベニバナが必要だ。国産ベニバナを他産地から仕入れた場合、コストが高い。人の口に入る健康食品を作るだけに、安全安心には細心の注意を払わなければならない。そこで、地元庄内で自社栽培することにした。

 2008年春。0.5アールの畑にベニバナの種をまいた。「ベニバナといえば、内陸のものだと思っていた」。酒田で生まれ育った中村社長はベニバナ畑を間近で見たことも、栽培した経験もない。すべてが手探り状態からのスタートだった。

 栽培している品種は本県の在来品種「最上紅花」。限りなく無農薬栽培に近いが、新芽にガが卵を産み付け、幼虫になると成長点を食い荒らすため、その時だけ農薬を散布する。種をまいてから花を収穫するまでの期間は約3カ月半。最も大変な仕事は花が咲くまでの除草だという。

 花の収穫は7月中旬ごろに1週間から10日かけて行う。摘み取った後は天日干しを3、4回繰り返す。完全乾燥させないとカビが繁殖し、商品として使い物にならない。

 ベニバナはもともとエジプト原産の植物。砂丘地は栽培に適しているが、庄内特有の強風は大きな障害だ。5月、葉が6枚ぐらい開いたころに台風並みの風が吹く。丈がまだ短いため、支柱を立てることができず、根が風で引っ張られて地上に出てきてしまう。

 「庄内でベニバナが栽培されない理由が分かるような気がした」。失敗を繰り返してきた中村社長は実感を込めて言った。風の被害を最小限に抑えるには、植える時期を早めるか、遅くするかしかない。さらに収量アップを目指すためには、丈夫に育つ良い種子を選別することも大切だ。

 収益性を高めることはもちろんだが、みどり農園は紅花を使った「まちおこし」を目的に栽培に取り組んでいる。猫の手も借りたい忙しさの収穫期は地元住民や観光客に手伝ってもらい、労働力を確保しながら地域を活性化する作戦を展開。内陸では白鷹町が既に取り組んでいる試みだ。このほか、中学生の職場体験も積極的に受け入れ、ベニバナ畑を学習の場として活用してもらおうと、教育委員会に働き掛けている。

 越田さんは「手間の掛かる作業だからこそ、人集めができる」と説明する。商品展開でも新たな戦略を構築中だ。「染料のイメージが強く、健康食材としての紅花はまだ確立されていない。食べる紅花を普及させるには、サプリメントの前段として、紅花の味と色を楽しんでもらえる手軽な商品があればいいのでは」。こんな思いから、新商品の紅花の紅茶と抹茶を開発、来月から販売する。

みどり農園が開発した紅花のサプリメントと2種類のお茶=酒田市松美町
みどり農園が開発した紅花のサプリメントと2種類のお茶=酒田市松美町
 紅茶は乾燥させた花のハーブティー。色は黄色で、漬物などの色付けにも良い。抹茶は特殊加工した花びらの微粉末。お湯を注ぐと鮮やかな赤褐色となり、滋味に富んださわやかな風味が広がる。

 ベニバナはサフランと似ており、例えば、オール庄内産の食材でパエリアを作ることもできる。工夫次第で食のアイデアがどんどん広がりそうだ。越田さんは「さまざまな料理に活用できる食品として2種類のお茶を売り込み、小売店やメーカーに使い道を提案してもらいたい」と話す。

 「ベニバナを見ようと山形県を訪れた人が、庄内に畑がないと知ったらがっかりするでしょう」。酒田はかつて特産品の紅花を上方へ運んだ中継地として栄えた港町。栽培に関して全くの素人だった中村社長と越田さんは、食品としての紅花の魅力が広がれば、花畑の美しさが人を呼び、県全体にも波及効果が及ぶと信じている。今はまだ小さいが、庄内でも確実に「紅花復興」の芽は育ち始めている。
(「食と農を問う」取材班)

【県内のベニバナ栽培】県紅花生産組合連合会によると、組合に加盟する生産農家の加工用ベニバナの栽培面積は2010年度が約6.6ヘクタール。主な生産地は白鷹町と山形市。面積は1971(昭和46)年をピークに年々減少し、03年度は3.1ヘクタールに落ち込んだが、その後は増加傾向となっている。
(2010年12月19日 掲載)
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