その先へ 山形ものづくり立県

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プロローグ 未来照らす先端技術

2015/1/1 16:37
人工クモ糸「QMONOS(クモノス)」。山形県から世界に発信する新技術は幅広い可能性を秘めている

 鋳物、航空機、ミシン、自動車部品、半導体…と、本県には長い時間をかけて多様なものづくり産業が集積されてきた。そしてその層の厚さが他県にはない大きな強みになっている。長い伝統と文化に裏打ちされた優れた技術、たゆまず続けてきたイノベーション(技術革新)。それらに基づく高付加価値のものづくりが今、あらためて注目されている。

 山形県は東北で唯一、2030年代もプラスの経済成長率を維持する―。こんな興味深い推計がある。七十七銀行(仙台市)が昨年7月に発表した調査結果だ。その理由に挙げたのが本県で進む付加価値の高い製造業の集積だった。自動車関連や電子部品・デバイスといった製造業の高い生産性が、人口減少の影響を一定程度補えるという分析が背景にある。

 それらを裏付けるように、県内ではここ数年、製造業の先端分野で新たな動きが相次いでいる。その一つが、慶応大先端生命科学研究所や山形大工学部といった“大学発”ベンチャー企業の誕生・躍進だ。

 世界初となる人工クモ糸の量産技術開発や、唾液検査でがんなどの病気を早期に発見する技術の実用化を目指した取り組みが始動。有機ELの多様な技術を生かした新会社が生まれ、リチウムイオン電池の研究開発拠点づくりを目指す構想も動きだした。

 さらに、本県が最も得意としてきた機械加工分野も健在だ。伝統的な技術をロケットや航空機など最先端の分野や製品に生かし存在感を示す企業、あるいは認知度は低いものの業界屈指の技術で静かに成長を続ける企業など、その奥行きは深い。

 真の“ものづくり立県”へ。技術力と多様性を備えた製造業を基幹産業とする本県が、人口減少が加速する中、進むべき方向性は明確だ。高い潜在能力を秘めた山形のものづくり企業が今どんなビジョンを描き、どこを目指しているのか。その戦略と経営者らの思いを追う大型企画「その先へ 山形ものづくり立県」を毎週日曜日付で連載する。

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