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[7]金属加工技術で木製ブロック ニューテックシンセイ(米沢)

2015/2/22 14:23
国内外で注目を集める「MOKULOCK」。国際見本市などで高い評価を得ている

 世界中で親しまれているブロック玩具を木材で作る―。単純な発想に思えるが、実現には高い加工の技術と、100分の数ミリ単位にこだわる細やかさが求められる。ニューテックシンセイ(米沢市)は、金属加工技術を生かし、木製ブロック「MOKULOCK(もくロック)」の開発、ブランド化に成功。国内外の市場に送り出している。

■背景に危機感

 パソコンやプリント基板の組み立てなどを長く手掛けてきた。現在も事業の柱は変わらないが、畑違いの木製ブロック開発に踏み出したのは2009年。本業が伸び悩んでいた時期だ。桒原晃社長は「国内の大手メーカーが次々に外資と業務提携するなどしていた。中小企業の自分たちも、何かを打ち出さなければいけないと感じた」と振り返る。強い危機感が原動力となった。

 社長の発案を受けて取り組んだのは、現もくロック事業部開発技術課の山岸新司課長(40)。社長と二人三脚でスタートした。まずは自社の持つ技術を洗い出し、県工業技術センターとの情報交換、木工業者の見学などに走り回った。

 山岸課長は、ある木工業者から発せられた一言が忘れられない。「木をなめない方がいい」。既存の商品を木材に置き換えて作ることは他社も試みていたが、成功例は少ないのが現実だった。「木は生きているから伸び縮みする。金属より軟らかいからこそ、難しさもある」。今もこのことを胸に刻み込んでいる。

 もくロックは縦約1.6センチ、横約3.2センチ、高さ約1.3センチ。家具材や建材としては使うことのできない規格外の県産材が材料で、現在はカエデやケヤキ、サクラなど6種類の広葉樹を使用している。

 樹種によって微妙に硬さが異なるため、木材ごとの最適な寸法を導き出すため試行錯誤を繰り返した。髪の毛1本分よりも細い、100分の数ミリ単位での調整を施した。湿度の影響で起こる「伸び縮み」は材質ごとに含水量を調べた上で乾燥させる期間を設定。厳しいチェックの下で管理している。

「MOKULOCK」を生み出す自社開発の製造装置。プログラミングに基づき、全自動で木材を切削する=米沢市花沢

 さらに、あらかじめプログラミングし、木材からブロックを自動的に削り出す製造装置は自社開発した。開発開始から1年後の10年に試作品第1号が完成。当初は山岸課長が1人で担当していたが、現在は6人が専従。製造機も約40台に増設し、1日当たりの生産量は48ピース入り(税別4千円)を約30箱作れるまでの量産体制を築いた。

■国内外で評価

 今年1月には、パリで開かれた欧州最大級のインテリアと雑貨の見本市「メゾン・エ・オブジェ」に出展。環境を保全しつつ持続可能な産業や開発に取り組んでいることが認められ、約3千社中9社にのみ贈られた「グリーン・アイテナリー賞」を受けた。日本企業では唯一の受賞だった。「国内外での評価は自信になる。もくロックが物心ついたわが子に対し、親が最初に買い与えるおもちゃになることを目指したい」。山岸課長は試行錯誤の日々を思い浮かべ、語った。

 桒原社長は「木材でブロックを作ること自体は特別な技術ではないのかもしれない」とする。一方で「もくロックは世界に一つ。この商品を量産し続けられることが、うちのものづくりの強み。蓄積してきた技術が特別な技術になった」と力を込めた。県産材が生み出すぬくもりと技術に裏打ちされた確かな商品力は、国境を越えて着実に評価を高めている。

  (ものづくり取材班)

【ニューテックシンセイ】 1980(昭和55)年に新星電子として設立。1992年に現社名へ変更。主な事業はパソコンなど通信機器の組み立て。「MOKULOCK」は11年に販売を開始した。資本金3100万円。従業員数は126人。

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