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[24]コケを使った緑化資材開発 モス山形(山形)

2015/7/5 11:25

 二酸化炭素(CO2)など温室効果ガスの増加に伴う地球温暖化。特に都市部では、気温が周辺の郊外部よりも高温を示すヒートアイランド現象が問題となっている。その緩和策として、屋根や壁面など限られたスペースでの緑化が求められる中、コケを活用した環境緑化資材を開発・製品化しているのがモス山形(山形市)だ。管理が容易で軽量、ランニングコストが低いなどのコケの特性を生かし、あらゆる箇所に設置可能な部材、工法を生み出している。

中山間地で緑化資材用のコケを生産するモス山形の山本正幸社長=山形市上東山

■中山間地活用

 「乾燥しても枯れないコケは雨水だけでの管理も可能で、断熱効果にも優れている」と話す山本正幸社長(63)。コケを使った緑化資材を本格的に開発するきっかけは、温室効果ガスの削減率を締約国ごとに定めた京都議定書が1997年に採択されたことだった。2007年には、新連携計画「コケ植物による屋根・壁面等の簡易緑化システムの開発・事業化」が東北経済産業局から認定を受け、現在は県内外の約15ヘクタールで栽培に取り組んでいる。

 山形市東部の滑川地区から「べにばなトンネル」を抜けた先の高瀬地区には、同社の「生産工場」が道路沿いに広がる。作物の鳥獣被害、農業の担い手減少などに伴って耕作放棄地の増加に見舞われている中山間地域。同社はそうした土地を引き受け、大規模なコケ栽培を展開している。「コケは水やりなどの手間が掛からず、朝露と夜露で水分が供給される中山間地は栽培の適地」と山本社長は語る。

 事業を始めた当初は水を多く与えすぎて枯れさせるなど、ノウハウを確立できずに苦労した。試行錯誤の末、ポリプロピレン製の栽培マットに種苗を植え付ける手法を考え出し、安定的な生産に成功。緑化を用途としたコケ栽培では、国内の第一人者となった。

栽培マットの導入により大規模で安定的な生産を実現。都市部では工場の緑化資材などに用いられている

■空調負荷軽く

 同社が開発した主力商品「コケボード」。厚さ5センチの断熱材とコケを組み合わせた物で、重さは固定金具を含めても1平方メートル当たり30キロほどだ。芝やセダムなどと比べて軽量なのが特徴で、荷重制限のある箇所にも設置可能。「畳のように敷くことができる」(山本社長)ため、工場などの屋根に多く見られる凹凸のある折板屋根の上でも効率的な敷設を実現する。

 同社の調査では、外気約30度の時にコケボードを設置した屋根の表面温度を測定したところ、設置していない場合と比べ約20度低減できたという。室内への熱流が抑制されることから、冷房など空調負荷の低減が期待される。

 コケボードのみならず、無かん水の「コケユニット工法」、トンネルなど半円形の箇所にも取り付け可能な「コケマット工法」、河川のコンクリート護岸にも適用できる「コケ吹き付け工法」など、あらゆる箇所に対応できる仕組みを生み出してきた同社。山本社長は「都市部と異なり、豊富な農地など恵まれた環境が残る地方はコケの栽培に向いている。地方の可能性を生かせる事業なので、今後も挑戦を続けていきたい」と力強く語った。(ものづくり取材班)

【モス山形】 1991年5月に設立。環境緑化の機運の高まりを受けて、95年にコケの生産・販売事業へ進出。「モス」は英語でコケを意味する。資本金3247万円。社員数は15人。

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