その先へ

[26]世界初真四角線コイル開発 後藤電子(寒河江)

2015年07月19日
音の出るテーブル(手前)や有機EL照明(左奥)を紹介する後藤芳英社長。これまで培ったコイル製造技術で新たな製品を生み出している=寒河江市・後藤電子
音の出るテーブル(手前)や有機EL照明(左奥)を紹介する後藤芳英社長。これまで培ったコイル製造技術で新たな製品を生み出している=寒河江市・後藤電子
 厚さ15ミリの有機EL照明から音楽が流れる。スピーカーは見当たらない。発光パネル自体が振動板の役割を果たしているからだ。コイル製造を主力とする後藤電子(寒河江市、後藤芳英社長)が生み出した「musicbook(ミュージックブック)」シリーズの一つ。世界で初めて開発した真四角線のボイスコイルなどを駆使し、テーブルの天板やモニターの役割を兼ねる巨大なホワイトボードも音響機器に変えてしまう。

 真四角線コイルに象徴される独自のコイル製造技術が強み。大手の電機、自動車メーカーにテレビや車のスピーカー用などのコイルを供給しているほか、音響関連部品の開発・製造に取り組む。「技術開発は永遠だ。コイルの製造技術を高めてきたからこそ、今がある」。後藤社長は強調する。

 電線をらせん状や渦状に巻くコイル。電流を流すことで磁界を発生させ、セットとなる磁石と作用してものを動かしたり、電気信号を音の振動に変えたりする。真四角線は一般的な丸線に比べて効率的にパワーが得られ、省スペース化を図れるなどのメリットがある。

新たなコイルを試作し、さらなる製造技術の向上を目指している
新たなコイルを試作し、さらなる製造技術の向上を目指している
■理想追い求め
 「丸線をボールに例えると、一層、二層と重ねていくと隙間ができる。隙間をなくすには、四角が理想だと思った」と後藤社長。1980年代の初め、コイル製造に携わったばかりの20代のころを振り返る。しかし、当時は真四角線を製造する電線メーカーはなかった。電線から開発するには膨大な費用がかかる。諦めざるを得なかったが、理想のコイルはずっと頭から離れなかった。

 それから約10年。中国進出を果たすなど事業を拡大する一方、バブル崩壊で日本の経済が右肩下がりの時代に入った。「このままでは日本での仕事がなくなる。持ち直すには、真四角線しかない」。95年、前人未到の挑戦を決意した。

 当初は幅0.1ミリの金属の板材を用意。これを0.1ミリの厚さに切れば、0.1ミリ角の電線ができると考えた。1本300万円する特注の極薄刃物を作ったが、板材に当てた瞬間に壊れた。「300万円が燃やすより早くなくなった」(後藤社長)。苦難の道が続いた。試行錯誤を繰り返し、最終的に丸線を真四角に成形する製造方法を確立。絶縁のための表面処理や巻き線技術も高め、1999年に製品化した。

■コアは国内に
 真四角線コイルはすぐに注目を集めた。それにつれ、メーカー側の要求も高くなる。より太い線で、より細い線で作れないか―。ニーズに応える形でさらなる技術開発が続いた。現在は銅の真四角線の場合、0.08ミリから2.50ミリの範囲で対応可能だ。軽量化に向け、アルミなど違う材質でも開発に取り組む。

 培った技術と開発力は、山形発の有機EL照明の付加価値向上にも役立てている。ミュージックブックシリーズでは、音声で非常口の場所を案内する避難誘導灯なども開発。後藤社長は「(日本人が青色を開発した)発光ダイオード(LED)の製品も中国や韓国製が売れている。せっかく日本で開発した技術は日本から発信したい」と思いを語る。海外進出しても、真四角線などコアな技術は国内に残したままの姿勢に通じる。

 挑戦は続く。現在は一つ一つが連続してつながった独自開発のコイルを使い、携帯電話をどの場所でも置くだけで充電できるテーブルの構想などを温めている。「将来的に世の中が必要とするものを考えている。開発力よりもむしろ、次の時代を創造する力が大切だ」。視線は常に「その先」を見据えている。(ものづくり取材班)

【後藤電子】 1963(昭和38)年創業し、78年に法人化した。2004年に山新3P賞の繁栄賞、09年に県産業賞などをそれぞれ受賞。社員数は94人。2015年2月期の売上高は34億円。
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