[31]多様化する特殊作業靴、高い信頼 青木安全靴製造(河北)
2015年09月06日
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河北町にある青木安全靴製造(青木稔社長)。名は体を表すというが、同社は社名を見ただけで業務内容がすぐに分かる。作業員の足元を事故やけがから守る安全靴製造の、国内における草分けであり、ニーズが多様化する特殊作業靴のメーカーとして現在も多くの現場で高い信頼を得ている。![]()
多様な現場からの要請に応え2000種以上の靴を作り出す青木安全靴製造=河北町谷地
51(昭和26)年、米軍払い下げのテント布地と牛革を組み合わせ、底に板をボルトで固定した商品を世に出した。これが国産安全靴の元祖であり、2千種以上に及ぶ、現在の同社製品のルーツとなった。 ■機能も変化 作業靴に求められる機能は、産業構造の移り変わりとともに変化してきた。単純な製造業の場合は足裏やつま先の負傷を防止するだけで十分だったが、化学工業が盛んになると耐熱性や耐油性、耐薬品性などが必要とされるようになった。電気による火花が事故につながる現場では静電気を地面に逃がす機能が、食中毒対策などで高度な清潔さが必要な職場では「抗菌」を上回る水準の「制菌」靴が求められる。 現場の要求に同社は技術開発で応えてきた。労働災害で多い転倒事故を防ぐためには滑りにくさが不可欠。同社は県、山形大工学部と連携し、米ぬかを原料にした「RBセラミックス」入りの靴底を開発し特許を取得している。渡部欽也工場長は「一口に滑るといっても、原因は雨、雪、油などさまざまある。要因に応じてRBセラミックスの混合率や粒子の大きさなどを変えている」と説明する。滑りに対して万能な靴はないため、現場の状況に応じて多様な製品が生み出される。接地面の耐久性と履き心地の良さにつながるクッション性を両立するため、踏み抜き防止用のステンレスプレートをゴムと発泡ポリウレタンで挟む技術も同社の特許だ。 現在、特殊作業靴を製造する国内メーカーは5、6社。一般的な靴と同様に安価な海外製品が市場にあふれ、国産品の生産量は減っている。だが、厳しい環境で求められるのは、海外製品とは一線を画す高い機能性。「自衛隊、消防、警察などの装備として当社製品が採用されている」と渡部工場長。一見すると同じようなデザインでも、用途に応じて作業時の姿勢に配慮した屈曲性、着脱をしやすくするためのファスナーの取り付け位置など、細かい工夫が施されている。 航空自衛隊の戦闘機パイロットの足元を支えるのはすべて同社の製品という。危険な火災現場で消防士が安全に動き回れるよう、防弾チョッキに用いられる高強度・高耐熱性樹脂を材料にした靴もある。 ![]()
国産初の安全靴(手前)と最新技術を用いた安全靴(奥)。右はその断面モデル
数ある製品の中で異彩を放つのが糖尿病対応靴と、足に障害があり装具を着用している人向けのシューズだ。糖尿病は血流障害などの合併症が重症化すると下肢の切断を余儀なくされることがあり、日ごろのフットケアが重要とされる。糖尿病対応靴は、つま先の空間に余裕を持たせ靴擦れなどのダメージを受けにくくし、清潔さを保つため内側に抗菌素材を使用。装具対応シューズは、着脱が楽にできるようはき口を大きくしているほか、かかとや足首をしっかり包み込むような設計になっている。 渡部工場長は「安全が求められるのは作業現場だけじゃない」と力説。病気や障害に起因する足元の不安を取り除き、安心して一歩を踏み出せる靴。これも同社が考える「安全靴」だ。 (ものづくり取材班) 【青木安全靴製造】1967(昭和42)年設立。一般作業用安全靴から特殊作業用安全靴、レース用のドライビングシューズまで2千種以上を生産する。従業員42人。
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