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[34]特殊車両手掛ける高い技術 大江車体特装(山形)

2015年10月04日
霊きゅう車のひつぎを入れるレール部分の製造作業=山形市・大江車体特装
霊きゅう車のひつぎを入れるレール部分の製造作業=山形市・大江車体特装
 「確かにリスクはある」。パトカーや消防車など、さまざまな特殊装備車両を手掛けてきた大江車体特装(山形市相生町)にとっても、車体を支えるフレームのないモノコックボディーの高級車を使った霊きゅう車への改造は、大きなチャレンジとなる。「車を輪切りにするのだから。(改造を)一度始めたら後戻りはできない」。大江栄治社長(68)はそう言って、口元を引き締める。

ボディー切断
 トラックボディーの改造には定評がある。ほろ車、アルミバン、パワーリフト、クレーン…。長い年月をかけて培ってきた技術は高いレベルを誇る。霊きゅう車もワゴン車、マイクロバスからの改造は手掛けており、ひつぎを搬入するドアなどは、1枚の鉄板をたたいて製作してきた。

 モノコックボディーは多くの乗用車に採用されているが、パーツ全体で車体の強度を保つように設計されているため、改造が非常に難しい。ひつぎを入れるために、車体をストレッチ(延長)する必要がある霊きゅう車への改造はなおさらだ。強度を支える外板(ボディー)そのものを切断するからだ。

 同社もこれまでは二の足を踏んでいた。「東北で霊きゅう車の改造をゼロから請け負って販売している会社はない」と大江晴久専務(40)。逆に言えば、ビジネスチャンスでもある。大江社長は「働く車がなければ、人間社会はなり立たない。高齢社会を迎え、葬祭業者が多くなってきているが、オーダーメードの霊きゅう車をメーカーは何万台も造れない」と語る。

 霊きゅう車への改造は、まず車体を輪切りにし、そこに伸ばす分の鉄板をつないで仕上げる。簡単なようだが、極めて難しい技術が必要だ。車体と同じ種類の鉄板を違和感が出ないように成形し、新たな骨格を造る。同社では専門の開発事業部を組織し、検討を重ねてきた。その本部長を務める大江裕二取締役次長(40)は「溶接技術などトラックボディーの改造で培った経験は、モノコックボディーの改造にも応用できる。でも何よりも肝心なのは応用力計算」という。

提携業者と共に仕上げた霊きゅう車。「オリジナル」を目指した取り組みを始めている=山形市・大江車体特装
提携業者と共に仕上げた霊きゅう車。「オリジナル」を目指した取り組みを始めている=山形市・大江車体特装
応用力計算
 実用車である以上、安全に走行するのが大前提。モノコックボディーの車は改造すると、メーカーが緻密に計算した剛性が崩壊する。「ボディー剛性を高めるには強度の計算が必要で、さらにその数値に適合した材料を使わなければならない。この応用力計算をきちんとするのが大変だ」(大江取締役次長)。走行中の安定性、ホイールアライメント(ホイールの整列具合)の正確さ、ひずみに対する補強処理…。必要とされる技術は多い。

 同社は現在、霊きゅう車を関東方面の提携業者と共同で仕上げているが、やまがた地域産業応援基金の助成を受け、“独り立ち”の準備を着々と進めている。「積雪地域では融雪剤によるボディーの腐食やさびの発生もある。だが、そのメンテナンスは“製造元”でなければ対応できない。寒冷地仕様の霊きゅう車も目指す」と大江社長。

 霊きゅう車改造に向け、同社は9月、工場内に重機用クレーンやスポット溶接機などの機材を整備する専用ブースの工事に入った。ブース完成後の11月にはオリジナル霊きゅう車の“製造”を始める予定だ。完成は約1年後。社運を懸けた事業が始まろうとしている。(ものづくり取材班)

大江車体特装 1862(文久2)年に人力車製造業として創業。1963(昭和38)年に株式会社化し、その後、自動車改造を始める。車のシートや床、天井といった内装から、パトカーや消防車などさまざまな車体の製造・特殊改造まで幅広く手掛けている。
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