その先へ

[39]超精密金属部品を製造 米沢放電工業(米沢)

2015年11月22日
 手掛ける金属部品の数は月に1500種類、5千個を超える。それぞれに切削や研削、素材に電極を近づけて溶かし、または切る放電、硬度を上げる熱処理などの加工を施す。その工程数は数万に上る。「目指しているのは部品をつくることではなく、技術をつくること」。米沢放電工業(米沢市)の橘田明弘社長(59)はそう言うと、フロアの天井を見上げた。

約70台の工作機械が並ぶ工場。マシンは改良し、性能をアップさせている=米沢市
約70台の工作機械が並ぶ工場。マシンは改良し、性能をアップさせている=米沢市
■たった1個の受注
 部品の用途は多岐にわたる。全体の6割を占めるのが金型向け。その金型は、スマートフォンやデジタルカメラ、プリンターに車用の各種スイッチといった幅広い機器のパーツを生み出す。さらに半導体などの製造装置の部品、航空機や自動車のエンジンの部品加工も引き受ける。ほとんどがオーダーメード。しかもたった1個の受注だ。多くがミクロン(千分の1ミリ)単位の精度を求められる。

 「こんなものもやってます」。そう言って橘田社長が1本の針をかざして見せた。毛髪を樹脂テープに植え付けるための針だ。かつらメーカーから受注した。太さは0・2ミリ。毛髪を引っ掛けるためのかぎが付いている。自動化された装置にセットして使うため、均一で、しかも高い精度が要求される。そのメーカーは取引業者に加工を依頼して回ったが「難しい」と断られ続けた。数十社目にたどりついたのが米沢放電だった。メーカー側は消耗品として年間数千個が必要と考えていたが、同社が加工した針は耐久性が高く、400本程度で済むという。

 約70台の工作機械が並ぶ1200平方メートルほどの工場。各マシンは独自にプログラミングをし直すなどして改良し、性能を向上させている。窓はない。太陽光を遮断し、素材が熱や温度によって変位するのを防ぐためだ。ここで生み出された部品は年間約150社の顧客に送られる。各社から要求される品質、価格、納期の全てを考慮した上で月に数万に上る工程を管理する。これが橘田社長の言う「技術」だ。社員の幅広い技能をマネジメントすることが技術化と捉えている。

高い精度が求められる金型部品など
高い精度が求められる金型部品など
■科学的手法追求
 制御盤を操作する社員を見ながらトップは続けた。「科学的根拠のある手法を確立したい」。社員に対し、この思いを繰り返し伝えている。情報を集積し、分析を加え、系統立てて物事を決定する。それらを蓄積して次に生かす。設計、製造、検査、そして管理の全てに、この考え方を取り入れようという挑戦だ。

 「将来、どんな時代になるか分からない。金属加工ではなく、化学の分野に参入したり、今は存在しない素材を扱ったりするかもしれない。科学的手法を確立すれば、あらゆることに対応できる。それが企業として生きていく道だと考える」

 橘田社長は1992年、35歳で父の後を継いで社長に就いた。その前の経歴を「実は」と言って話した。

 25歳から8年ほど、モータースポーツの世界にのめり込んだ。舗装されていないコースを走るダートトライアルの全日本選手権などにドライバーとして参戦。80、81年には全日本チャンピオンの座に就いた。当時はドライバーだけでなく、メカニックも仕切り、スポンサーとの交渉、マスコミ対応も自分でこなした。いろいろな世界を知り、頂点にも立った。その経験が発想の根底にあるという。

 「ほかの人がやらないこと、世の中にはないやり方を目指したい。常に理想を追求したい」。強いまなざしでそう言った後、照れたようにまた天井を仰いだ。「本当はこの節穴を見て、空想しているだけだけど」(ものづくり取材班)

 ◆米沢放電工業 1972(昭和47)年に金型製造の橘田(東京)の子会社として創業。年間売上高は約6億円。社員数70人。
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