挑む、山形創生

第1部「働くということ」 (3) サイエンスパークの挑戦<中>

2016年01月04日
I・Uターンをはじめ、人材が続々と集まる「スパイバー」。広々とした本社研究棟では、社員たちの活気があふれている=鶴岡市覚岸寺
I・Uターンをはじめ、人材が続々と集まる「スパイバー」。広々とした本社研究棟では、社員たちの活気があふれている=鶴岡市覚岸寺
 日光のよく入る明るいフロア。社員たちが活気に満ちた雰囲気の中で打ち合わせやデスクワークに取り組んでいる。仕切りのない広々とした空間もさることながら、目を奪われるのはそれぞれの充実した表情だ。世界で初めて人工合成クモ糸素材の量産に成功した鶴岡市の慶応大先端生命科学研究所発バイオベンチャー企業「Spiber(スパイバー)」(鶴岡市覚岸寺)。事業内容の先端性や企業理念が強い求心力となり、国内はもとより、海外からも広く人材が集まっている。

 同社の関山和秀代表執行役(33)が起業したのは2007年。3人での船出だった。13年に量産可能な技術開発に成功し、今年はスポーツ用品大手のゴールドウイン(東京)と共同開発した「ムーンパーカ」の販売開始を目指す。現在は延べ床面積6550平方メートルの本社研究棟に生産現場やオフィスエリアなどを構え、社員は約100人を数えるまでになった。

■1割海外から
 「テーマがよく、中身に価値があると思ってもらえれば、地球上どこにいても人は集まってくる。そこは証明できている」。自信あふれる口調で関山氏は語る。

 同社のスタッフは約1割が米国やサウジアラビアなどの海外出身者。社員募集には毎週のように数十人単位で応募が寄せられ、その半数は海外からのものという。グローバルなIターンの受け皿となっている。

 もちろん国内でもI・Uターンのきっかけとなっている。横浜市出身の大利麟太郎(おおとし・りんたろう)さん(30)は同市に本社があるメーカー勤務を経て、昨年10月に入社。研究開発担当として勤務している。「今までの世の中にない技術を生み出していることに興味があった」といい、転職を即決した。「日常で息苦しさを感じない地方はいい。山や海など、ここにしかない価値が身近にあることもすごくいい」

■いつか地元に
 施設管理などに当たる総務担当の冨樫修さん(30)は鶴岡市出身のUターン組だ。茨城県内の大学を卒業後、アウトドアショップに就職。関東で7年余り勤めたが、いつか地元に帰ろうとの気持ちは漠然と抱いていた。一方で、魅力的な仕事はなかなか見つからなかった。そんな折にスパイバーの存在を知った。「環境に負荷を掛けないという理念に共感する部分が大きかった。チームの一員として使命感、責任感が持てる」と充実感をにじませる。

 起業の際、まず課題となるのが資金の問題だ。一般に雇用創出の観点からベンチャー支援の重要性が指摘されるが、実際には自治体や金融機関は信頼も実績もない小さな企業に補助金を出したり、融資をしたりすることが得意ではない。

 その点、スパイバーと鶴岡市の関係はどうか。関山氏は地方で起業する利点について、支援を受ける自治体との距離感の近さ、コストの少なさなどを挙げ、「たくさんありすぎて切りがない」と笑ってみせた。

 政府の掲げる地方創生をめぐっては、中央省庁や独立行政法人の研究機関の地方移転が議論されているが実現は難しそうだ。企業の地方移転も簡単ではない。

 一方、「地方へ」を先取りするスパイバー。「取り組んでいることに対し、大きな価値、情熱を抱く人に来てほしい」。企業(チーム)として魅力を提示できれば、都会も地方も関係ない。関山氏の言葉にはそんな自信があふれる。地方創生に求められているのはこんな新しい視点かもしれない。
(「挑む 山形創生」取材班)
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