挑む、山形創生

第2部「雪」 (1) 域内移住の現実

2016年02月17日
人口が増加し、新しい住宅街が広がる東根市内。県北部からの移住者が多いことも人口増加の一因となっている=若木山より北西を望む
人口が増加し、新しい住宅街が広がる東根市内。県北部からの移住者が多いことも人口増加の一因となっている=若木山より北西を望む
 尾花沢市は1904(明治37)年度から2014年度までの過去110年間の最大積雪深の平均が1メートル71センチという言わずと知れた豪雪地だ。団体職員の有路博和さん(60)は14年5月、同市延沢から東根市中央東1丁目に移り住み、現在は尾花沢市まで通勤している。「毎日の除雪が負担だった。朝やって、帰宅してからまたやって…。長年世話になった延沢の人たちには感謝しているが、冬場の日常がつらかった」

 尾花沢での冬は、体力を使う“余計な仕事”が多かった。庭木の雪囲い、撤去。雪下ろしは1シーズン3~4回で、怠ると戸が開かなくなった。

 数年前、娘のスキー大会の応援で米沢市に宿泊中、大雪が尾花沢市を襲った。「家がつぶれる」と思い、約2時間かけて引き返し、除雪をした。その後、売却した家は、一冬放置されると、たちまち雪の重みで屋根が崩落してしまった。

■学校、職場ない
 除雪機を使う必要のない東根市での暮らしに、心底胸をなで下ろしたような表情を浮かべる。「希望する進学先や職場がないから移住する人もいる。県立東桜学館(中高一貫校、東根市)ができれば移住者はもっと増える」

 尾花沢市で生まれ育ち、市内で郵便局勤めを終えて退職した元市老人クラブ連合会長の石山秀夫さん(88)=天童市長岡=は去年12月、66年間暮らした尾花沢市鶴巻田の自宅を引き払った。転勤族の孫が建てた新居に、息子と3世代同居することにしたからだ。

 若いころは苦にならなかったが、最近は除雪をするにも体力の衰えを感じるようになった。買い物や病院に行くのに市の中心まで車で出掛けなければならなかった。これも移住を決断した要因だった。

 去年11月、「暇乞い(いとまごい)」の文書を集落の約100世帯に配った。何人かからは「なんだて、いぐながわ(行ってしまうのか)」と返答があった。区長をし、地区の流雪溝整備をした昔の思い出がよみがえった。今は新居での暮らしに気持ちを切り替えている。

■1年間に402人
 近年、東根市や天童市などの人口が増えている要因の一つに、北村山地域や最上地域から移り住む人が増えていることが挙げられる。14年の県の調査を見ると、例えば尾花沢市から県内市町村に移り住んだ人は1年間で402人。このうち98人が東根市に移っている。県外転出は149人にすぎず、いかに多くの人が県内で住まいを変えているかが分かる。

 大石田町は134人が県内市町村に移り、このうち東根市が39人、次いで山形市が30人。新庄市など最上地域を見ても東根、天童、山形各市などへの移動が多い。雪の多い県北の住民が雪の少ない地域へと徐々に住まいを移す状況は、東京圏に人口が吸い寄せられる日本の縮図にも見える。

 しんしんと降り積もる雪、視界を奪うほどに吹きすさぶ吹雪…。比較的暖冬とはいえ、今冬も県内はさまざまな表情の雪に苦しめられている。

 毎朝、毎夕の雪かきや、一冬に複数回の雪下ろし、その後の雪片付けなどはいずれも高齢者にとっては、身体的にも精神的にも大きな負担だ。車社会の地方にあって雪道の運転も大変だし、徒歩での移動は一層不便で危険性も増す。

 地方への新しい人の流れをつくるためには、こうした負担を少しでも軽減する視点が不可欠だ。「自助」「共助」という名の下で、住民に我慢を期待するだけでは雪の少ない地域への人口移動は止まらない。

 その一方、雪国だからこその絆もあるし、雪を生かした産業や観光の可能性もある。第2部では「雪国山形」をめぐる問題点、そして可能性に注目する。
(「挑む 山形創生」取材班)
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