挑む、山形創生

第2部「雪」 (6) 溶かす技術

2016年02月22日
冬でも歩きやすい融雪歩道。冬期間の負担軽減に力を発揮している=山形市
冬でも歩きやすい融雪歩道。冬期間の負担軽減に力を発揮している=山形市
 雪国の生活は、冬期間に一変する。煩わしい自宅前の除雪や、死の危険もはらむ雪下ろし。積雪のある道路や歩道は、移動するだけでも大変だ。年間を通し同じようなライフスタイルが維持できれば、雪を理由に地元を離れる人は減るはずだ。雪を「溶かす技術」に注目してみたい。

■地下水熱活用
 「雪を見ながらランニングするのも、新しい雪国の魅力になるのでは」。地下水を活用した消融雪システムを提供する日本地下水開発(山形市)の桂木聖彦常務は言う。歩道や車道、駐車場などの散水、無散水消雪を手掛け、30年以上の施工実績は県内外に広がる。散水の総延長は約100万メートル。無散水の総面積は約150万平方メートルで東京ドームのおよそ32個分だ。

 当初は散水方式で始め、1980(昭和55)年に地下水熱を利用した無散水方式を導入した。散水した地下水により凍結の心配などがない。技術開発が進み、現在は地中熱や海水熱、温泉熱などさまざまな熱源を駆使し、地下水が利用できない地域でも利用を可能にしている。井戸を掘る技術の進展で、10年ほど前からは家庭用も手掛ける。

 桂木常務は「30年以上かけてようやく消融雪がインフラのようになってきた」と話す。超高齢化社会を目前に今後、消融雪システムの果たすべき役割は大きいと感じている。一方、「雪があるからこそ、他県と違う魅力も出せ、新しいまちづくりもできる」と雪国だからできる技術開発の可能性を強調する。

 現在、研究を続けているのが、無散水消雪技術を応用した「帯水層蓄熱冷暖房システム」。簡単にいえば消融雪で熱を使った冷たい地下水を夏場の冷房に用い、夏場に水温の上がった地下水をまた冬場の消融雪と暖房に活用する仕組み。実証実験を繰り返しながら将来的には公共施設や民間ビルへの活用を模索しており、二酸化炭素排出量や消費エネルギーの削減をうたったまちづくりも可能ではないかと考えている。

■雪の事故削減
 県内の雪下ろし・落雪事故などの発生状況を見ると、2010年度から14年度の5年間で計951人が死傷している。このうち死者は58人に上る。冬期間の事故抑制は大きな課題だ。

 屋根融雪については各社が電熱線を使ったヒーターなどの商品を既に開発し、一部で普及も進んでいる。雪下ろしの負担は減るが、現状では電気代などのランニングコストが課題だ。

 売電収入でランニングコストを軽減しようと、太陽光発電パネルにヒーターなどの熱源を後付けする方法も登場している。天童市にあるエスパワーはこの取り組みをさらに進化させている。5年に及ぶ研究開発により、独自技術で太陽光発電パネルの構造内に発熱体を組み込んだ融雪機能付きの製品を生み出した。

 パネル全体を均一に溶かす技術などについて試行錯誤を重ね、昨年4月に商品化にこぎ着けた。発売からまだ間もないものの、既に県内を中心に福島県や秋田県などでも施工実績がある。同社管理部の小松浩樹係長は「地元企業として地域のニーズに応えたいという思いだった。今後もさらなる効率化などを目指したい」と意欲を見せる。

 地元企業の努力によって雪国の生活はゆっくりだが着実に向上している。融雪道路などはその代表例で、その普及と技術の進歩は、数十年前には考えられないレベルといえるだろう。世界的にも雪の多い国とされる日本。「溶かす技術」には、本来もっと光が当たっていい。一層の進化に期待したい。
(「挑む 山形創生」取材班)
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