挑む、山形創生

第2部「雪」 (8) 雪を生かした観光(上)

2016年02月24日
冬の観光イベントの先陣を切って開催された「やまがた雪フェスティバル」。予想以上の来場者に関係者は手応えをつかんだ=1月30日、寒河江市・最上川ふるさと総合公園
冬の観光イベントの先陣を切って開催された「やまがた雪フェスティバル」。予想以上の来場者に関係者は手応えをつかんだ=1月30日、寒河江市・最上川ふるさと総合公園
 そびえる雪の塊を重機が整えていく。真っ白な雪肌が青空に映える。2月中旬、西川町の月山志津温泉街。昔ながらの宿場町を雪で再現するイベント「雪旅籠(はたご)の灯(あか)り」の準備が進められていた。「雪は山形の財産。生かさない手はない」。同温泉旅館組合の志田靖彦組合長は強調する。

 学生ボランティアの協力で温泉街の約200メートルの通り沿いに宿坊などを制作。ろうそくの明かりで冬の夜を彩る。2015年は計6日間で約6千人が訪れた。春の大型連休に匹敵する入り込みという。11年目の今回は今月26~28日、3月4~6日に開催する。

 積雪が6メートルに及ぶという豪雪地。故に「以前は冬にいらっしゃいという発想がなかった」と志田さんは振り返る。除雪作業に追われ、接客する余裕がなかった。冬が開店休業状態でも、月山の夏スキーで賄えた。ただ、スキー人口は減少している。夏に偏る経営を見直す必要があった。

 冬の観光に力を入れた結果は「正解だった」。雪旅籠だけでない。スノーシューや雪上車によるツアーなど、雪を生かした企画が支持された。

■冬の落ち込み
 蔵王の樹氷やスキー場、最上川の舟下り。本県には雪の季節ならではの魅力があるにも関わらず例年、観光者数が冬に落ち込む。14年度を月別に見ると冬(12月~15年2月)は年間の15%程度。「夏に比べて催事が少ない上、降雪が周遊型の観光を妨げている」と県は分析する。

 打開に向け、県は昨年12月から3月初めまでの期間で冬の観光キャンペーンを展開。寒河江西村山5市町などと実行委員会を組織し、県内各地の冬の催事を紹介するオープニング行事として「やまがた雪フェスティバル」(寒河江市、1月29~31日)を初開催した。7万人の見込みを大幅に上回る延べ16万人余りが来場した。県内シンクタンクが経済効果を推計している。

 雪を使った取り組みの成功例といえる雪旅籠だが、課題もある。「期間中、宿泊客数を5割程度に抑えている」と志田さん。温泉街に宿は9軒しかない。従業員もイベントの運営に回るため人手が欠けることになり、フル回転できない。過去には10日間通して開催したこともあった。来場者は増えたが「マンパワー不足。スタッフの体力がもたなかった」と振り返る。

 昨年は寒河江市や東根市の宿泊施設からバスツアーの利用があった。周辺の飲食店にも波及効果が出ているという。「志津だけの観光客ではない。役立ててもらうことで祭りはより発展する」。他地域との連携に可能性を見いだしている。

■同等の選択肢
 雪を活用し、産業につなげる。その「良いモデル」として吉村美栄子知事が挙げているのが「さっぽろ雪まつり」だ。始まりは中高生が公園に作った雪像だったが、冬の一大イベントとして成長した。札幌観光協会(札幌市)によると67回目の今年は大小200基の氷雪像を制作し、2月5~18日の2週間で約260万人が訪れた。

 札幌は人口190万の大都市。市営地下鉄3路線が通り、バス路線も充実している。約190軒の宿泊施設があり、定員は約5万人に上る。

 都市の構造も規模も異なる本県と札幌とを単純に比較することはできない。しかし、旅行者から見ればどちらも同じまな板に載った選択肢。後発組が誘客競争で前に出るには、新たな仕掛けも必要だろう。

 雪フェス会場には、関係者が「期待以上だった」と話すほど若い家族連れの姿が目立った。子どもも父母らも一緒になって雪原を駆け回った。「雪で遊ぶ楽しさを提供できたことは良い結果かもしれない」と県の担当者は話す。雪に対する県民のイメージをプラスに向けること。それは雪国・山形の観光を盛り上げる一つの活路かもしれない。

(「挑む 山形創生」取材班)
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