挑む、山形創生

第3部「よそ者」の視点(4) 江本一宏さん(川西)

2016年03月31日
「動物の命を奪う意味に向き合いたい」として始めた狩猟の様子を語る江本一宏さん。地域との関わりや活動を自分目線で発信している=川西町小松地区
「動物の命を奪う意味に向き合いたい」として始めた狩猟の様子を語る江本一宏さん。地域との関わりや活動を自分目線で発信している=川西町小松地区
 ―川西町出身で14年ぶりのUターン。全くの「よそ者」ではありませんね。

 「町を離れて都会で夢をかなえたい人、町に戻って地元のために働きたい人、どちらの気持ちもよく分かります。ただ、都会と田舎をてんびんに掛けて比べるのは違う気がします。都会は都会の良さがあるし、田舎もまたしかり。結局はその人がどう生きたいかに尽きると思います」

 ―協力隊に応募したきっかけは何ですか。

 「5年ほど前、千葉に住んでいました。職場と自宅を往復するだけの日々。『定年までずっとこのままでいいのか』。ふと、漠然とした違和感を覚えました。その直後、東日本大震災が発生。買い占め行動で店頭から物が消え、お金はあるのに食べ物が買えない“貧しさ”を味わいました。他人に依存し消費するだけの暮らしは、根本的な何かが欠けている気がして戻ることを決めました」

■本当の田舎者
 ―活動内容や2年間の活動を通じて感じていることを教えてください。

 「都会から来た人をもてなした際、田舎っぽいものの良さが分からないのが田舎者だと知りました。本当の田舎者は『井中者』。『井の中の蛙(かわず)』という意味です。大事なのはそうならないことではないでしょうか。協力隊として暮らしを見つめ直し、新しい気付きを発信する使命があると思っています」。

 「町内の若手農家有志と新しいコミュニティーをつくりました。その名も『農道・百笑一揆(ひゃくしょういっき)』。豊かな食を守り、若者が将来に希望を持てるよう農業で生計を立てられる道はないか。技術の共有▽農都交流の推進▽加工品の製造―などを通して農業再生に活路を見いだせればいいなと思います」

 ―狩猟免許も取得されたとか。

 「住民の方からサルやイノシシなどに畑を荒らされていると聞き、何とかしたいと思いました。また、動物の命を奪う意味に向き合いたいという思いもありました。食肉解体の過程は日常生活から遠ざけられ、命が食べ物に変わるさまを目にする機会はほとんどないからです。昨年11月に免許を取得し、今シーズンは初めての猟でカモ2羽を仕留めました。命の重みは掛け替えのない命に触れることでしか理解できない。そう思い知らされ、多くの人に伝えたいと思っています」

■生活甘くない
 ―若い世代に県内に移住・定住してもらうために何が必要だと思いますか。

 「都会の人を迎え入れるとき、肝に銘じていることがあります。それはあえてもてなしを『しない』。『田舎で暮らす』という言葉には牧歌的でのんびりとした雰囲気が感じられます。生き馬の目を抜くような慌ただしい都会とは違った時間の流れや晴耕雨読の自給自足生活を田舎暮らしに求めている人も少なくないです。しかし、『田舎でスローライフ』はそんなに甘くないと思うんです。もてなしが行き過ぎると住民の日常が見えなくなるばかりか、もてなす側も長続きしません。少し肩の力を抜いて自然体で接した方が地域を知ってもらう早道だと思います」

(「挑む 山形創生」取材班)

【共通質問】山形ってどんな感じ?
(1)山形のどこを全国にPRしたらいい?
▽人と自然。あえてもてなしをせず、飾らない日常を伝えるのが大事

(2)山形の悪いところ、改善した方がいいところは
▽「何もない」「どうせ田舎だから」と悲観するところ。月並みだが、田舎には田舎にしかない良さがある

(3)山形らしさを一言で
▽ほっとする場所。誰でも迎え入れてくれるホスピタリティーがある

 えもと・かずひろ 1981(昭和56)年1月生まれ、35歳。川西町上小松出身。大学進学を機に千葉県に移住。卒業後は大学職員などを務めた。2014年4月、地域おこし協力隊として14年ぶりにUターン。農業や狩猟などに取り組んでいる。
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