挑む、山形創生

第5部大学生の力(1) 若者獲得への取り組み

2016年05月31日
 今月20日、山形市内中心部のビルの催事場。大学名を掲げたブースがいくつも並び、入試担当者が熱く自らの大学のセールスポイントを語り掛けていた。毎年、3月末からこの時期にかけて、全国の大学は学生確保に向けて各地でガイダンスなどに奔走する。取材に訪れた山形市内の会場には、東北地方だけでなく、東京都内の有名私立大も参加。学生争奪戦の様相を呈している。

■1600人超に説明
 山形大の入試担当部署、エンロールメント・マネジメント(EM)部の斎藤靖EM企画課係長は、男子高校生2人に同大の特色やカリキュラム、授業料などについてパンフレットを見せながら説明していた。同大は昨年度、北海道から名古屋市まで、77会場のガイダンスに参加。1600人を超す高校生らに面談での説明をこなした。同大は昨年度までの3年間、前期入試の競争率は3倍を維持している。

山形市内で開かれた大学進学説明会。高校生に各大学の担当者が魅力や特徴について売り込んでいた=今月20日
山形市内で開かれた大学進学説明会。高校生に各大学の担当者が魅力や特徴について売り込んでいた=今月20日
 県内出身者の入学者を増やす取り組みもしているが、高速バスで通学可能な仙台市周辺の高校生は有力なターゲットだ。ナスカの地上絵、有機EL、重粒子線治療…。地方の大学ではあるが、同大の場合「売り」は多い。県外で大学を売り込む上で、こうしたセールスポイントが多いことは強みとなると斎藤係長は指摘する。

 文部科学省の学校基本調査(2015年度)によると、本県の地元大学進学率は19・3%。一方、県内の大学生の7割近くは他県出身者だ。18歳人口の流出・流入が大きいという本県の状況の中で、大学の「売り」をどう打ち出し、県内外の若者にアピールするのか。18歳人口が減少に転じる「2018年問題」も見据え、各大学はさまざまな取り組みを進めている。

■就職率アップ
 東北芸術工科大が16年度、志願者数を大幅に増やした理由の一つは就職率の高さ。建築・環境デザイン学科など「ものづくり系」の人気が高く、宮城県内の高偏差値校からの志願が増えた。五十嵐真二常務理事は「確かな出口があることが理解されてきた」と説明する。15年度の学部生の就職率は87・5%。前年を7・2ポイント、前々年から13・8ポイントアップした。美術科も約8割に上っている。「芸術系大学は就職に苦労する」というイメージを覆した。

 もともと志願者の少ない芸術系大学にとって、人口減少は受難。生き残り策として、芸工大は従来と異なる「舞台」をつくった。新学科を開設し、美大志望者だけでなく、一般大学に流れる受験生の獲得を図った格好だ。企業と連携した商品開発、デザイン制作という、結果が求められる環境で学ぶ。地域に入り、問題解決やイベント企画に取り組む。その成果は世間に触れ、在学中に関わった企業に進む学生もいる。

■県外がけん引
 開学16年目を迎えた東北公益文科大の場合はどうか。「徐々に知名度は上がっているが、東北でもいまだに似た名前の別大学に間違えられるケースもある」と、佐藤英美入試・広報班長は表情を曇らせる。16年度の入学者は定員235人に対し201人。比較的新しい地方大学にとって学生募集は一筋縄ではいかないのが実情だ。

 ただ、近年の入学者数は増加傾向だ。けん引するのが、県外からの入学者。各種大学ランキングで名前が紹介されることも増え、16年度は過去最高の88人に上り全体の4割超を占めた。秋田県を中心に石川県や福岡県の出身者もいる。

 開学当初から力を入れるフィールドワーク、小規模大学ならではのきめ細かな指導体制、高齢化でニーズが高まっている社会福祉士の資格取得―などが志望動機に挙がるという。「学生募集には特色を出すことや人材育成の取り組みが重要」と神田直弥公益学部長。「学生の後輩や友人を通した口コミも大切」と指摘する。

   ×   × 
 地方創生に絡み、大学のレゾンデートル(存在価値)が問われている。県内に若者が増え、定着するきっかけを生む大学の力は大きい。大学は、そして大学生は山形をどう考えているのだろうか。第5部は「大学生の力」に注目する。

(「挑む 山形創生」取材班)
挑む、山形創生 記事一覧
文字サイズ変更
  • 小
  • 中
  • 大

県内7市発行メールマガジン登録無料

ふるさとだより

週1回配信中!

ニュース特集

スポーツ

教育・子育て

おでかけ

暮らし情報

twitter発信中

山形新聞からお知らせ

  1. 【2017年8大事業】
     山形新聞、山形放送の2017年の8大事業が決まりました。詳しくは、こちらから
  2. 【やましん公式FB】
     山形新聞社は、インターネット交流サイト「フェイスブック(FB)」の公式ページを新設しました。
     公式ページでは山形新聞のニュースのほか、本社からのお知らせなどを中心に紹介します。
     アドレスは、こちらから
  3. 【やましんe聞で動画視聴】
     読者限定の電子版「やましんe聞」で動画を閲覧できる新サービスを始めました。詳しくは、こちらから。
  4. ◆中学、高校の各種スポーツ大会の記録を紹介。検索機能も備えています。アクセス方法はこちら
  5. ◆探したい記事がきっと見つかる、山形新聞記事データベース。他社DB横断検索が便利な日経テレコンジー・サーチファクティバ
  6. ◆県外でも今日の朝刊が朝一で読める「お届け電子版
  7. ◆ニュース速報、高校野球、モンテ情報、おくやみ… 身近な情報を携帯で確認「モバイルやましん
  8. ◆故郷の話題をメールでお届け、ふるさとメール会員募集(登録無料)
山形新聞から
販売から