挑む、山形創生

第5部大学生の力(5) 地域づくりにおける役割

2016年06月05日
 鳥海山の麓に位置する酒田市日向地区。間近に仰ぎ見る秀麗な山容や「玉簾(たますだれ)の滝」で知られる豊かな自然が広がる。現在、約千人が暮らし、高齢化率は40%台と高い。かつて地域のシンボルだった日向小は2009年3月に閉校した。

■講師訪問が縁
 過疎化が進む中山間地にとって、地域コミュニティーをどう維持し、活力を生み出すかは大きな課題だ。こうした悩みを抱える日向地区で数年前から、地元酒田の東北公益文科大の学生たちがフィールドワークを展開している。

中田地区の住民と活性化について話し合う東北芸術工科大生=4月23日、金山町・旧中田小
中田地区の住民と活性化について話し合う東北芸術工科大生=4月23日、金山町・旧中田小
 11年の市民大学出前講座で同大の講師が日向地区を訪れた縁でつながり、12年に地域課題を洗い出す研修会、13年に防災マップ作り、除雪ボランティアなど学生を交えた活動を実践した。日向コミュニティ振興会の工藤志保事務局長は「活動当初は腰が重かった地域の人たちも、若い学生が顔を見せることで積極的に関わる住民が増えた」と明らかな変化を口にする。

■課題洗い出し
 日向地区のように、地域のよりどころだった小学校の閉校は地域に危機感をもたらし、まちづくりの機運が高まるケースがある。14年3月に中田小が閉校した金山町中田地区もそう。東北芸術工科大コミュニティデザイン学科の醍醐孝典准教授のゼミ生が町の求めに応じて活動を始めたのは、その翌年の15年度からだった。

 学生らは地区の祭りで住民と交流を深め、各地でヒアリング調査も実施した。12~2月には月1回ずつ、地区の将来を考える「なかだみらい会議」を泊まり込みで開催。住民と共に地域課題を洗い出し、活性化に向けたアイデアを話し合った。カフェ、音楽祭、雇用創出、婚活パーティー…。そこで出たアイデアは多彩で、すぐにでも取り組めそうなものもあった。

 中田地域振興委員会長を務める地元の栗田正一さん(65)は「われわれの四角い頭では出てこないアイデアが次々に出てくる」と、学生の斬新な発想に感嘆の声を上げる。16年度は女子学生11人が同地区に入る。栗田さんは「実行の年。できるものから一つずつ実行に移す」と力を込める。

 学生の活動がビジネスチャンスを生んだ例もある。上山市では、山形大人文学部の山田浩久教授の授業を受ける学生が市内を巡り、観光モデルコースづくりを進めている。商店街での食べ歩きや路線バスを利用した観光など、その発想は地元観光関係者が新鮮に感じることも多い。上山市観光物産協会の長橋圭子係長は「学生には予想もしないものを生み出す力がある」と、若い感性を生かしたまちづくりに期待を寄せる。

■プラン商品化
 単なる授業の一環で終わらせなかったのが月岡ホテルだ。昨年、学生考案の観光プランを商品化。カップルや女性向けの4コースを提供しており、興味を持つ人は多いという。「地域のことを考えてくれる学生の姿がうれしい。若者を上山に呼び込むヒントにもなる」と江副保総支配人。学生のアイデアをきっかけにQRコードを活用した情報発信にも取り組み始めた。「学生から学ぶ部分もある。これから一緒にいろんな挑戦をしながら、観光プランを発展させたい」

 まちづくりのために、大学を活用しようという動きは活発化している。大学側にとっても地域との連携は望むところで、両者は「ウィンウィン(相互利益)の関係」に見える。大学は多種多様な知的資源を持つ教育研究機関だが、地域が求めているのはその知識だけではなく、学生が持つ“よそ者の”視点や価値観、そして可能性にあふれた若者の存在そのものなのかもしれない。

(「挑む 山形創生」取材班)
挑む、山形創生 記事一覧
文字サイズ変更
  • 小
  • 中
  • 大

県内7市発行メールマガジン登録無料

ふるさとだより

GW特別号、26日配信

ニュース特集

スポーツ

教育・子育て

おでかけ

暮らし情報

twitter発信中

山形新聞からお知らせ

  1. 【2017年8大事業】
     山形新聞、山形放送の2017年の8大事業が決まりました。詳しくは、こちらから
  2. 【やましん公式FB】
     山形新聞社は、インターネット交流サイト「フェイスブック(FB)」の公式ページを新設しました。
     公式ページでは山形新聞のニュースのほか、本社からのお知らせなどを中心に紹介します。
     アドレスは、こちらから
  3. 【やましんe聞で動画視聴】
     読者限定の電子版「やましんe聞」で動画を閲覧できる新サービスを始めました。詳しくは、こちらから。
  4. ◆中学、高校の各種スポーツ大会の記録を紹介。検索機能も備えています。アクセス方法はこちら
  5. ◆探したい記事がきっと見つかる、山形新聞記事データベース。他社DB横断検索が便利な日経テレコンジー・サーチファクティバ
  6. ◆県外でも今日の朝刊が朝一で読める「お届け電子版
  7. ◆ニュース速報、高校野球、モンテ情報、おくやみ… 身近な情報を携帯で確認「モバイルやましん
  8. ◆故郷の話題をメールでお届け、ふるさとメール会員募集(登録無料)
山形新聞から
販売から