挑む、山形創生

第6部食で呼び込む(1) 村山、尾花沢、大石田の「三街道」

2016年07月20日
県内外から多くの客が訪れる「七兵衛そば」。休日などは、開店前から店舗前に長い列ができる=大石田町
県内外から多くの客が訪れる「七兵衛そば」。休日などは、開店前から店舗前に長い列ができる=大石田町
 日曜の午前10時半を回った大石田町次年子。山林と水田が広がり、民家が静かに立ち並ぶ36戸の集落が、にわかに騒がしくなった。地元のそば店「七兵衛そば」(井上一義店主)を訪れた観光客が、開店前の店舗に60人ほど人だかりをつくった。観光客が止めた車のナンバーは仙台、所沢、長岡など。各地の言葉がにぎやかに飛び交う。

 「来るのは2回目。ごそごそしているけど、香りが良くて好き」。金子正登さん(58)=仙台市青葉区、会社員=は待ち切れなそうな表情。インターネットで知り、3時間かけて来たという山本洋さん(41)=茨城県日立市、会社員=は「田舎の緑が気に入った。行列に驚いた」、高橋征男さん(74)=福島市、無職=は「太い田舎そばはたまに食べたくなるんだよね」と高揚感を漂わせた。午前11時の開店とともに、観光客は配られた番号札順に店内に入り、豪快にすすって胃袋を満たしていた。

■星の入った麺
 七兵衛そばは、大石田そば街道(大石田町、14店舗)の中の1店舗。北村山地域には他にも、最上川三難所そば街道(村山市、13店舗・施設)、おくのほそ道尾花沢そば街道(尾花沢市、13店舗)があり、そば処(どころ)として知られている。

 自治体と店などでつくる各そば街道は、村山で1994年10月、大石田で98年11月、尾花沢で99年10月にそれぞれ発足。これまで口コミと各メディアで宣伝されたことにより、各街道の店舗は大きな集客力を持つ。七兵衛そばはその代表例だ。2003年には三つの街道が、おくのほそ道最上川そば三街道を組織し、広域連携によるスケールメリットを生かしたさらなる地域振興を図っている。各市町の統計によると、15年度は、村山の街道に20万1千人、大石田に20万200人、尾花沢に17万6千人が訪れた。

 遠方から人を呼び寄せ、地域ににぎわいを生む田舎の味について、大石田そば道楽の会顧問の高橋昭治さん(83)=大石田町横山=はこう解説する。「田舎そばは、殻を付けたままで製粉した、黒いそばのことを言う。この殻が入ると麺に黒い点々が付く。これは星と呼ばれるが、星が入ったものは、香りも強く栄養価も高い」。さらに、北村山は昼夜の気温差が大きく、霧の発生しやすい地域で、この気象条件が、ソバのでんぷんを糖化させ、おいしさを育むという。でわかおり(村山)、来迎寺在来(大石田)、最上早生(尾花沢)と、使う品種の違いも魅力の一つだ。

■振る舞い企画
 尾花沢市では、宮城県北部に通じる国道347号鍋越峠付近17.7キロ区間の冬季閉鎖が、今季から解除される予定。尾花沢そば街道の「手打ちそば たか橋」店主の高橋晃治さん(64)は、347号の通年通行化による観光客の増加に期待している。高橋さんの店ではゴールデンウイークと、お盆のある8月の来店者が最も増える。ただ冬季は客足が遠のき、2月には800~900人と、最盛期の約3割に落ち込む。高橋さんは「347号の通年通行化が冬季間の誘客につながれば」と期待する。

 そば三街道にとっても、宮城県へのルートが太くなることは関心事。「手打ちそば おんどり」(村山市山の内)の店主で、おくのほそ道最上川そば三街道協議会長の佐藤和幸さん(54)は、347号の通年通行実現を前に、宮城県内の自治体を訪問してそばの振る舞いを企画している。「100万都市の仙台市を抱える宮城県は、外せない誘客のターゲット。サクランボ、バラ、スイカ、温泉など、北村山の名物と一緒に、そば処を売り込んでいきたい」と意気込んでいる。

    ×  ×

 秋の風物詩「日本一の芋煮会」、そば街道、食の都庄内…。本県は「食」を前面に出したブランド戦略を描いている。人口減少が進む中、本県の豊かな「食」は交流人口拡大に向けた重要なキーコンテンツになり得る。第6部は「山形の食」の可能性を探る。

(「挑む 山形創生」取材班)
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