挑む、山形創生

第6部食で呼び込む(4) 県外で勝負

2016年07月23日
「やみつきしみかりせん」を販売している煎餅工房さがえ屋本店。店に足を運ぶ県外客も増えている=寒河江市越井坂町
「やみつきしみかりせん」を販売している煎餅工房さがえ屋本店。店に足を運ぶ県外客も増えている=寒河江市越井坂町
 「幻の調味料」「山形の至宝」「おかわり必死の滋味」―。インターネット上でこう形容される商品とは、山一醤油(しょうゆ)製造所(長井市、斎藤弥助店主)の無添加調味料「あけがらし」。独特の辛みと甘さが特徴で「ご飯のお供」はもちろん、酒のさかなやソースの隠し味にも最適。県外で人気が高く、商品を求め全国から遠路長井まで足を運ぶ客が後を絶たない。

 あけがらしは和がらし、米こうじ、しょうゆ、三温糖、麻の実などを原料に、門外不出の製法で調合し発酵、熟成させる。テレビや雑誌に引っ張りだこで、高級料亭で使われたり、有名百貨店で取り扱われたり。家族生産のため増産にも限りがあり、注文から数カ月待ちはざらという。

ヒットの理由
 「この希少性が消費者心理を突いた」。斎藤店主はヒットの理由をこう分析する。創業1789(寛政元)年の同社。約二百数十年間、商圏は店から半径約10キロの範囲だった。だが、現在は顧客の約9割がその範囲外。ほとんどがリピーターという。「おいしいことは大前提。ここでしか味わえない独自の価値が商品の魅力を押し上げてくれる」

 県外客を引き寄せる山形の味は他にも多くある。ぬれ煎餅の味わいはそのままに、カリッとしたかみ応えが特徴の「煎餅工房さがえ屋」(寒河江市)の「やみつきしみかりせん」もその一つ。メディアに取り上げられたことで知名度が急上昇し、県内外から注文が殺到。直営店に足を運ぶ県外客も増えた。

 客からの「ぬれ煎餅が欲しい」という要望を受けて2008年に商品化。老舗醸造元と共同開発したオリジナルのたれを染み込ませ、3日以上かけて低温で乾燥させることでうま味と歯応えを引き出している。

 もともと主力商品だったが、昨夏にテレビ番組で紹介されたことで一気にブレーク。直後には、1日2桁台だったネット通販の注文件数が6千件まで急増した。今でも工場は休みなしでフル回転しており、予約は1カ月待ちの状況だ。

 全国的に知られるようになると、商品自体が強い集客力を発揮する。本店には商品を求めて県外から訪れる客が増加。特に宮城ナンバーの車が目立つようになった。単なる買い物で終わりではなく、温泉に漬かったり、そばを食べたりするなど、山形観光とセットで楽しむ客も多いという。

 山田佐知子主任は「やみつきしみかりせんに関心を持ってもらうことが、山形自体を知る一つのきっかけになっている」と、人気商品がもたらす波及効果を感じている。以前に比べると、若者の姿が見られるようにもなった。

逆輸入めざす
 首都圏で人気が高まった商品の、県内への“逆輸入”を目指す企業もある。

 佐藤製餡(あん)所(新庄市、佐藤勝也社長)は「悠豆里庵(ゆとりあん)」のブランド名で7種類の煮豆を販売する。北海道産の大豆を使用。200グラム入りで価格は486円と煮豆としては高価な部類だが、食品添加物は一切、使っていない。佐藤孔一専務は「健康志向の高まりにより、高くても良い商品を買い求める首都圏の消費者に人気だ」と話す。

 あんこの製造を手掛けてきた同社だが、「百貨店で売れる商品」を作ろうと、約20年前に商品化したのが煮豆だった。百貨店の催事で売上高を伸ばし、今では首都圏数カ所の百貨店で常設販売。年間約10万袋を販売する主力商品になった。

 同社は伝統的に「県外に販路を求めてきた」(孔一専務)といい、煮豆も90%以上が首都圏での販売。首都圏から県内への逆輸入を目指す商品の一つだ。県内で消費者の購買意欲を獲得するには価格が課題というが、県外で実績を上げて地元の活性化に寄与する。そうした地方創生の方法もある。
(「挑む 山形創生」取材班)
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