挑む、山形創生

第7部変わるU・Iターン(1) 売り手市場の就活

2016年08月30日
 県内企業の役員が普段着姿で集まった。参加する若者らもカジュアルな装い。帰省中の求職者をターゲットに今月12日、山形など県内3市で開かれた「マッチングフェア」。U・Iターン人材と企業の接点をつくろうという試みだ。求職者と会社側が椅子を並べて輪になり、膝を詰めて語らった。

 賃金や福利厚生など、求人票にある「条件」だけで仕事は選べない。仕事のやりがいや裁量など、人それぞれ基準がある。U・Iターンでは、都会と山形の生活を比べることにもなる。自分は何を大切にしているのか。経営陣のPRを聞きながら参加者自身も考えていた。

■選択への迷い
 首都圏の大学に通う4年の女子学生(21)は複数の内定を得ているが、県内企業を中心に就職活動を続けている。都内で働く道もあるが「生まれ育った地元に貢献したい思いもある」。都会で働くか、山形に戻ってくるか。自分にとって何が正しい選択か、自信を持てずに迷っている。

 「東京に飽きました」。都内で飲食店を経営していた山形市の男性(47)はUターンの理由をそう言って席に着いた。長男であり、両親のことも気掛かりだった。7月に帰郷し現在求職中。「向こうでは情報が少なくて」。東京より給与水準が低いことは分かっている。どんな企業があるのかをまずは知りたいという。

U・Iターン者を対象にした就職イベント。企業の担当者もカジュアルな装いで、自社の魅力をアピールした=12日、山形市・山形テルサ
U・Iターン者を対象にした就職イベント。企業の担当者もカジュアルな装いで、自社の魅力をアピールした=12日、山形市・山形テルサ
 企業側からは人材獲得への熱意がにじむ。仕事は増えており、担い手が必要なのに「採用がうまくいかない」と打ち明ける。

 同市のウェブ制作会社コラボプランは「こういう機会を通じて人材を発掘したい」とする。技術を要する職種。都内の大手と取り合いになれば条件面で勝てない。「山形で働く意志がある分、U・Iターン希望者との接点を大事にしたい」という。

 墓石を主とする石材総合商社ナイガイ(山形市)の米本泰専務は「今後は企画力、提案力のある人材が必要」と考える。人口減少に伴って墓の引っ越しなどニーズの多様化を見込む。東京という成熟した市場で勤めてきた人材は「ニーズの変化に敏感だ」と評価。能力の高い人材を採用するためには「収入など条件だけでなく、やりがいを伝えることが大切だ」と感じている。

■価値観に変化
 イベントを主催したキャリアクリエイト(同)の原田幸雄社長は「多くの中小企業が採用できずに悩んでいる」と話す。県内の正社員有効求人倍率は2016年6月に0.79倍となり、統計を取り始めた04年11月以降で最高値を記録した。採用意欲は高まっているが人材獲得につながらない。要因の一つが人口減少だ。

 国立社会保障・人口問題研究所の推計で、30年の本県の人口は約95万人。生産年齢人口(15~64歳)は約50万人で、対10年比で約3割減少する計算だ。減少は全国一律ではなく、都市への流出は続く。売り手市場の中、人材争奪戦は既に始まっている。

 注目されるのがU・Iターンだ。県などの調査では、県内高校卒業生の転出は6割に上るが、うち7割が将来山形に戻ることを意識し、その3割がUターンしている。一定数が毎年戻っており「貴重な資源といえる」(原田社長)。

 個人の価値観も変わってきた。大企業で働くことや収入以上に、生きがいを重視する人々にとって、U・Iターンは重要な選択肢になっている。

 キャリアとは仕事や経歴だけでなく、生き方そのものを指す。「多様なキャリアを受け入れ、活用できなければ企業は生き残れない」と原田社長。U・Iターン者に選ばれるかどうか。「企業の度量と魅力そのものが問われている」と指摘する。

 山形の将来を担う人材をいかに獲得するか。労働力が減少する中で県内企業は対応を迫られている。一方で個人の価値観は多様化し、仕事に対する考え方も変わりつつある。第7部はU・Iターンの現状と今後を考える。
(「挑む 山形創生」取材班)
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