挑む、山形創生

第7部変わるU・Iターン(4) 仕事を辞めない選択肢

2016年09月02日
東京都のシステム関連会社に勤め、自宅でリモートワークする赤川健一さん=最上町
東京都のシステム関連会社に勤め、自宅でリモートワークする赤川健一さん=最上町
 インターネット環境が充実したことで、会社のオフィスに出勤しなくても働けるスタイルが広がりつつある。リモートワークは新しい「地方での働き方」を生み出した。首都圏で積み重ねたキャリアを捨てずに、Uターンする人がいる。

 最上町大堀のシステムエンジニア赤川健一さん(37)は7年前、母の病気を機に30歳でUターン。東京都のシステム開発会社に勤めたまま、在宅リモートワークで東京時代と変わらず仕事を続けている。

 勤務時間は東京の職場に合わせ、午前9時半ごろから午後6時半ごろまで。自宅リビング脇の書斎でパソコンと向かい合い、同僚とのやりとりはインターネット電話「スカイプ」などを使う。夕食は家族全員で食べる。子どもを風呂に入れた後、仕事する日も。深夜退勤が常だった東京時代には考えられないが、時間に融通が利くのも在宅リモートワークの利点だ。

■ストレス激減
 一方で課題もある。ミーティングのため月に一度は東京のオフィスに出勤するが、在宅ワーク時は同僚とのコミュニケーションにタイムラグができ、同じオフィスで働く場合に比べて生産性が落ちる。また、どんどん新技術が出てくる業界だけに、その流れに追いつかなければならない。

 だが、デメリットを補って余るメリットがあると感じている。東京時代より家族と過ごす時間が増えた。自然豊かな自宅で鳥、セミの鳴き声を聞きながらの仕事生活。ビルに囲まれて働いた頃と比べ、ストレスは激減。通勤時間も1時間からゼロになった。

 Uターンを考えながら踏み出せない人に「飛び込んでしまえば何とかなる」とメッセージを送る。「私がそうだった。考え過ぎず、行動を起こしてほしい。地方に若い世代が戻り、どんどん仲間が増えればいい」

     ◇
 山形市内の民家の2階。パソコンの画面には、川崎市内にある会計事務所の本社の様子がリアルタイムで映し出されている。石沢秀和さん(38)=同市清住町2丁目=は今春、古里・山形に戻り、リモートワークで在宅勤務をしている。

川崎市の本社とインターネット回線で結び、仕事をする石沢秀和さん。互いのオフィスの様子を見ることができる=山形市
川崎市の本社とインターネット回線で結び、仕事をする石沢秀和さん。互いのオフィスの様子を見ることができる=山形市
■同じ仕事内容
 転機は母が他界した2年前。その年の秋には山形と川崎で遠距離恋愛をしていた交際相手と結婚。「山形に戻らせてほしい」と、会社に相談した。実家2階の1室にデスクとパソコン、本社との連絡用のネット回線でつながったカメラを設置。電話やメール、ライブ映像でやりとりしながら、本社にいた頃と同じ仕事をする。顧客との面談や会議などで月2回程度は本社に行くこともあるが、山形でほとんどの仕事ができる。

 今はまだ、この働き方に慣れることで精いっぱいだという石沢さん。会社には山形の顧客を増やし、従業員も雇って本社の事務処理の一部を受け持たせるという構想もある。「そうできるように、何とか軌道に乗せたい」と意気込む。

    ◇
 板張りの床と壁に囲まれた部屋でキーボードをたたき、時々、「スカイプ」で動画を見ながら東京本社の社員と会議する。ウェブマーケティングを手掛けるIT企業「ベーシック」山形ラボリーダーの渡辺信生さん(39)=山形市下反田=は2009年、パソコンを使ったリモートワークによるUターンを実現した。山形市の雑居ビル「とんがりビル」3階の一室を拠点に、スタッフと計4人でパソコンと向き合う。

■視野広がった
 実家の隣に家を建てて暮らす渡辺さん。メリットは実感している。「無駄に多かった会議が減った」「円満な家庭になった」「地域コミュニティーに参加することで視野が広がった」…。交通が不便といったデメリットもあるが、総じて「子どもが小さいうちは人間らしい生き方ができる地方がいい」と感じている。

 渡辺さんは「首都圏はエンジニアの需要が高くて供給が追いついていない。地方に残る技術者まで確保しないと足りない状態にある」と指摘する。「地方でITの仕事がしたいと考える若者は、今後ますます増えていくのではないか」と飾らない言葉で語った。

雑居ビル3階の一室で、仲間とパソコンに向かう渡辺信生さん(左)=山形市
雑居ビル3階の一室で、仲間とパソコンに向かう渡辺信生さん(左)=山形市
(「挑む 山形創生」取材班)
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