挑む、山形創生

第8部海に生きる(4) 離島に寄り添い(下)

2016年09月29日
 漁業と観光を基幹産業とする本県唯一の離島・飛島。島民はピーク時の1940(昭和15)年の1788人から減り続け、今年8月末現在で216人、65歳以上が占める割合は68%に達する。「10年後の島はどうなっているのか」。島民の間から不安の声が漏れる。

■18~65歳対象
 県は島民や支援者、酒田市などで組織する「とびしま未来協議会」とともに島暮らしに興味がある18~65歳を対象にしたショート・ミドルステイ体験事業に取り組む。事業を開始した2015年度は17人、16年度は15人が手を挙げた。県庄内総合支庁総務課連携支援室は「移住を促したいが、まずは飛島に足を運び、その魅力を体感してほしい」と話す。滞在中の宿泊費、食費はタダで他県の取り組みとの違いをアピールする。

飛島から望む朝焼けの鳥海山。日本ジオパークの認定で注目度が高まっている
飛島から望む朝焼けの鳥海山。日本ジオパークの認定で注目度が高まっている
 大きな決断を伴う移住の前に、飛島暮らしを味わってもらう。魚価の低迷など漁業を取り巻く環境が厳しい中、大自然に富む島の魅力を売りにした観光は主産業に成長する可能性を秘める。だが、受け皿となる人材に乏しいのが現状だ。海水浴シーズンの繁忙期も旅館・民宿の受け入れ態勢が整わず、行楽客にやむなく断りを入れるケースもあるという。

 山形市の東北芸術工科大コミュニティデザイン学科3年の高橋紫(すみれ)さん(21)は今夏、島暮らし体験事業に臨んだ。山形市出身で幼い頃から家族で何度となく訪れた飛島。今回は1週間の島民生活を送った。

 滞在中はイカ釣り体験やUIターンの若者たちが経営する飲食店の手伝いなどを通して、島民と腰を据えて話を聞く機会に恵まれた。観光客では味わえない、島暮らしの実態。豊かな自然や密な人間関係に魅力を覚えた一方、暮らしを支える物資やサービスの少なさが目についた。だが、「何もないからこそ、さまざまな仕事を生み出せるのではないか」と前向きに捉える。

定期船発着所に降り立つレジャー客ら。観光振興が島の活性化に果たす役割は大きくなっている=酒田市飛島
定期船発着所に降り立つレジャー客ら。観光振興が島の活性化に果たす役割は大きくなっている=酒田市飛島
■今後も関わる
 埼玉県上尾市で暮らす佐藤貴利子さん(51)も体験者の一人。今年6、7月に20日間ほど滞在した。旅館に住み込み、夕飯の支度などを担い「充実した日々だった」と振り返る。東京生まれで飛島に縁はなかったが、数年前に病を患った経験から「自分にできること」を探すうちに偶然、飛島の事業を知り応募した。毛糸を使った絵画の作品作りに励む佐藤さんは「都会では味わえない大自然が魅力」と強調する。

 移住はそう簡単に決められないが、今後も何らかの形で飛島と関わり続けたい。2人の思いは共通する。

 飛島に新たな雇用を生み出し、定着を目指すUIターン者の存在に加え、外から島に思いを寄せる人も現れ、少しずつだが変化の兆しが見える。飛島観光協議会長の沢口与四一さん(70)は「頼もしくもあり、ありがたい存在」と新たな動きを歓迎する。観光により重きを置く島づくりが必要と感じている。鳥海山・飛島が日本ジオパークの認定を受けるなど追い風も吹く。沢口さんは「漁だけで生計を立てるのは難しい時代。漁場を集落単位で守るのでなく、提供し合う考えがあっていいのではないか。観光に関わる人との連携も欠かせない」との立場を取る。マンパワー不足の島で暮らす一人として、内なる変化の必要性を最大の課題と捉えている。

(「挑む 山形創生」取材班)
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