挑む、山形創生

第8部海に生きる(5) 海外とつながる酒田港

2016年09月30日
花王酒田工場で生産された中国向けの紙おむつが次々とコンテナに積み込まれていく。酒田港の活性化をけん引している=酒田市
花王酒田工場で生産された中国向けの紙おむつが次々とコンテナに積み込まれていく。酒田港の活性化をけん引している=酒田市
 酒田市内の倉庫。天井付近まで積み上げられた段ボールが、フォークリフトで次々とコンテナに移される。中身は紙おむつ。「行き先は中国です」。花王酒田工場の担当者が海の向こうを見つめた。

 酒田港のコンテナ貨物取扱量は2015年で2万2028個(20フィートコンテナ換算)。1995年に国際定期コンテナ航路が開設されて以来、2年連続で過去最多を更新している。

■3年間で3倍
 けん引役とされるのが、花王酒田工場の紙おむつの生産拡大だ。2014年に紙おむつ工場を新設して以降、拡張を続け、16年秋には新たに北側に整備した工場が稼働する。この3年間で酒田工場の敷地面積は15ヘクタールから25ヘクタールに広がった。従業員数は110人から3倍の330人に増加。ほぼ全員が地元雇用だ。

 「世界的にみると、紙おむつは普及期にある。中国を中心にまだまだ使用率は高まるだろう」。谷本均工場長は先を見通してそう言う。「海外に大量の製品を運ぶ上で船を使うのが一番安い輸送手段。酒田港があるおかげで、さまざまな戦略を描ける」と強調する。

 酒田港からは紙おむつ以外の製品も韓国・釜山を経由して東アジアやロシア、北米に輸出している。谷本工場長は「日本製の製品を輸出する上で海運は今こそ力を発揮できる」と指摘。さらなる港湾設備や航路の充実を期待する。

 一方、酒田港のコンテナ貨物の輸出入統計をみると、花王酒田工場の業況拡大に引っ張られるように、近年は輸出超過に転じている。「(輸送効率を高めるため)輸入は酒田港以外の国内の他港に頼っているのが現状」とある船会社の担当者。航路を維持する経営的な観点から輸入量のアップを望む。地方創生を実現するためにも、地域の外からモノや人が流入する姿が望ましい。

■外国船の寄港
 人口減少が進む中、人の流れを変える機会を生むと期待されているのが外国籍客船の寄港。各地で誘致に力を入れているが、酒田港もその一つだ。誘致活動が奏功し、酒田港に来夏、イタリア船籍「コスタ・ネオロマンチカ」(5・7万トン)が初寄港する。乗客数は1800人に上り、チャーター便10機分に相当。県内ツアーもあり、経済波及効果が期待される。

 国は寄港地における大型クルーズ船の経済効果を1人当たり3万~4万円と試算。単純計算で「コスタ―」の乗客数なら5千万円を超える。「人の受け入れの活性化は経済を支える」と国土交通省酒田港湾事務所の上原修二所長は話す。

 クルーズ船の寄港は東北地方で右肩上がりに増えている。国交省のまとめによると、青森港は昨年21隻(うち外国籍12隻)、秋田港は14隻(同5隻)。県によれば、従来は西日本が中心だったが、船会社もツアーのバリエーションを増やそうと模索しており、東北に光が当たっている。

 昨年の酒田港への寄港は邦籍4隻にとどまったが、「港のスペックは決して劣らない」(上原所長)。着岸する古湊ふ頭(1、2号岸壁)は16万トン級の大型客船にも対応できる。「東北でこのクラスを受け入れられるのは現時点で酒田港だけだ」と県空港港湾課。

 国は年度内をめどに接舷時の衝撃を和らげる防舷材の整備などを進めている。県や市も乗客と乗組員をもてなす市民有志の募集、外国語に対応できる案内人の養成など、市民を巻き込んだ歓迎ムードの醸成を図っている。

 「コスタ―」の受け入れが成功すれば、今後の外国籍客船の呼び込みの後押しになる。県の担当者は「受け入れ態勢づくりを進めるためにも、来年を試金石にしたい」と力を込める。物的、人的な流れの促進―。酒田港を活用した地域活性化の“針路”は示されている。行政だけでなく、市民が好機と捉えて動くことができるかが一つの鍵となる。
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