挑む、山形創生

第9部農林業の可能性(3) 進化続ける果樹農家

2016年10月19日
 本県の代名詞として知られるサクランボの収穫は高い脚立を使い、危険で大変な高所作業を余儀なくされる。そこで従来の栽培から樹高を低くしたり、枝をV字やY字に仕立てて横にはわせたりし、収穫しやすくする方法が導入され始めている。東根市で斉藤善雄さん(70)=同市神町中央1丁目=が進めている棚仕立てもその一つ。斉藤さんの園地では収穫期、手が届く約180センチの高さにサクランボの実が整然と並ぶ。棚仕立てを始めて12年。「人生の集大成として取り組んでいる」と、深いしわが刻まれた顔で語った。

棚仕立てのサクランボ畑。収穫ロボット導入や省力化に向けメリットが多いとされる=東根市
棚仕立てのサクランボ畑。収穫ロボット導入や省力化に向けメリットが多いとされる=東根市
■「革命」を確信
 棚仕立ては地上から一定の高さにブドウ畑のような棚を作り、果樹の枝を横方向に張らせる。脚立を使う必要もなく、安全性も高い。研究が進む収穫ロボットの導入にも適しており、生産者が高齢化する中、注目を集めている。

 半世紀に及ぶ農業人生。「常に進化することが大切」と思い続けてきた。もともと洋ナシの棚栽培をし、2004年からサクランボで試みた。1年ものの木を植え、水平に張り巡らせた針金に沿うように枝を誘引。技術的には難しくなかった。ただ、樹高が低いため、霜への対策に神経を使った。ボイラーなどの設備投資も行いながら育ててきた。

 成木になるには10年ほど。棚栽培3ヘクタールのうち、現在収量が確保できるのはまだ1ヘクタール程度だ。それでも「収穫スピードは従来の倍で、太陽の光も均一に当たり、品質もいい。メリットが多い」。今春、棚栽培の進化形「ジョイント栽培」を始めた。別の木の幹から伸びた枝を接ぎ木の方法で連結し、供給される栄養分を増やし、生長を早める仕組み。順調にいけば成木までの期間が4、5年に短縮できる。「棚栽培と収穫ロボットがセットになればサクランボの『産業革命』が起きる」と確信している。

高級感のあるブドウとして首都圏などで人気の高いシャインマスカット=米沢市・喜多屋果実店
高級感のあるブドウとして首都圏などで人気の高いシャインマスカット=米沢市・喜多屋果実店
■輝く期待の星
 「シャインマスカットをやらない理由はない」。本県ブドウ生産発祥の地・南陽市。水稲などとの複合経営に取り組む沼沢清司さん(52)=同市郡山=はそう強調する。シャインマスカットは06年に品種登録された種なしの大粒白ブドウ。マスカットのさわやかな香りと、濃厚な甘味が特徴で、皮ごと食べられ、パリッとした食感が好評を得ている。首都圏などで高値取引されている期待の星だ。

 沼沢さんは、本県が生産量日本一を誇るブドウ・デラウェアなどとは別に、約20アールの畑を用意。米価下落が進む中、収入の柱となる作物を探していた。不安の中での栽培だったが、出荷とともに払拭(ふっしょく)された。「単価はデラウェアの倍。シャインはブドウ産地の支えになる」

 県内のブドウ農家は高齢化が進む。JA山形おきたま管内で主力・デラウェアの生産量は10年前の6割程度、3千トン台まで落ち込んでいる。着色管理が難しい上、単価も低く、高齢の生産者には負担が大きい。

■冬の販売狙う
 「リンゴもブドウも果実の主力は『赤い』品種とされてきた。それをシャインは覆した」と同JA園芸課。白い実は着色管理が不要で手が掛からず、他の作物に労力を振り分けられる。南陽市や高畠町を中心に栽培面積は年々拡大し、15年度の市場出荷量は87トン。全国4位にまで成長した。

 全国でのシェアはまだ低い。活路は主産地に比べて遅い本県産の出荷時期にある。最新の長期貯蔵技術を活用し、単価が高まる冬の販売を狙う。贈答用として認知されれば、他産地と差別化を図れる。

 「サクランボをやっていた若い世代がシャインの生産を始めている」と沼沢さん。自身も新たに園地を30アール増やし、生産拡大を図る。江戸時代初期から脈々と続く本県ブドウ発祥の地で描く思いがある。「山形産は素晴らしい。そう言われる産地にしたい」

(「挑む 山形創生」取材班)
挑む、山形創生 記事一覧
文字サイズ変更
  • 小
  • 中
  • 大

県内7市発行メールマガジン登録無料

ふるさとだより

週1回配信中!

ニュース特集

スポーツ

教育・子育て

おでかけ

暮らし情報

twitter発信中

山形新聞からお知らせ

  1. 【2017年8大事業】
     山形新聞、山形放送の2017年の8大事業が決まりました。詳しくは、こちらから
  2. 【やましん公式FB】
     山形新聞社は、インターネット交流サイト「フェイスブック(FB)」の公式ページを新設しました。
     公式ページでは山形新聞のニュースのほか、本社からのお知らせなどを中心に紹介します。
     アドレスは、こちらから
  3. 【やましんe聞で動画視聴】
     読者限定の電子版「やましんe聞」で動画を閲覧できる新サービスを始めました。詳しくは、こちらから。
  4. ◆中学、高校の各種スポーツ大会の記録を紹介。検索機能も備えています。アクセス方法はこちら
  5. ◆探したい記事がきっと見つかる、山形新聞記事データベース。他社DB横断検索が便利な日経テレコンジー・サーチファクティバ
  6. ◆県外でも今日の朝刊が朝一で読める「お届け電子版
  7. ◆ニュース速報、高校野球、モンテ情報、おくやみ… 身近な情報を携帯で確認「モバイルやましん
  8. ◆故郷の話題をメールでお届け、ふるさとメール会員募集(登録無料)
山形新聞から
販売から