挑む、山形創生

第9部農林業の可能性(6) 森林ノミクスの現場

2016年10月22日
実習林で実習に取り組む県立農林大学校林業経営学科の1期生たち=大蔵村
実習林で実習に取り組む県立農林大学校林業経営学科の1期生たち=大蔵村
 県土の72%が森林の本県で、林業に追い風が吹き始めている。豊かな森林資源を有効活用し、地域経済の活性化につなげる県の「やまがた森林(モリ)ノミクス」による取り組みの一環で、大型集成材工場や木質バイオマス発電所が進出。本格的に人材育成も始まり、「林業の将来は明るい。希望の持てる産業になる」。県森林組合連合会長の佐藤景一郎さん(63)はこう言い切った。

■林業経営学科
 「チェーンソーの入れ方が甘かったな」。指導教官の指摘を受け、真剣なまなざしで切り株を見詰める学生たち。今年4月、県立農業大学校は林業の人材育成に乗り出した。「県立農林大学校」と名称を変え、新たに林業経営学科を新設。1期生たちが大蔵村の実習林で間伐を学んでいた。県外出身者3人を含む男女15人。2年間で2816時間の座学と実習を受け、現場で必要な高性能林業機械の操作資格を取得するほか、伐採、加工、造林、キノコ栽培まで幅広い知識、技術を学ぶ。森林ノミクス推進の担い手として期待され、学生の意欲は高い。

 なぜ今、林業を選んだのか。彼らはシンプルに「産業としての林業の魅力」を理由に挙げる。新庄市出身の村山裕貴さん(19)は「自然に関わる仕事がしたい。林業は自然を守る強さ、自分より長く生きている木を扱う格好良さがある」と話す。国産材は質が高く「もうける仕組みは作れる」と意気込む。

■揺るがぬ決意
 祖父がかつて林業に携わり、山になじみがあった鈴木隆俊さん(19)は米沢市出身。入学前、祖父には「林業はもうからないから苦労する。やめろ」と言われた。だが決意は揺るがなかった。山を守るという信念とともに、「林業を頑張る人のノウハウを学び、実践すれば勝ち目はある」と夢を語る。本県林業界は高齢化が進み、2014年度林業就業者数は1058人。11年前の約半数になったが、人材育成に力を入れ、県は19年までに1800人に増やす目標を掲げている。

 彼らを待つ現場はどうか。需要拡大で出口が広がり生産量が増えることが見込まれる。「雇用が増え、地域が豊かになる。そして経済が活性化すれば、需要がまた増える。その好循環に持ち込みたい」と、佐藤さん。現場では生産性向上、低コスト化に必要な高性能林業機械の導入で、効率化が図られている。機械の進入、木材搬出に欠かせない路網整備も進められている。

■「公共」に活路
 一方で、新築住宅の減少や建築様式の変化により、利益還元率や品質が最も高い「A材」は需要が減少。価格は低迷している。付加価値の高いA材の売れ行きは林業者の生産意欲に直結するといい、佐藤さんは「販路を考えなければならない」と指摘。南陽市文化会館のように大型施設、公共施設への県産材利用が進めば、活路が開けてくるという。

 ただ、県産材生産量は約32万立方メートルと、東北6県中最下位。県は19年までに57万立方メートルに増やす目標を掲げ、安定供給体制の整備に取り組む。実現には新たな木を確保するため再造林が欠かせないが、「育てる林業」は遅れている。県土に占める森林割合が本県と同じ秋田県の人工林率(植林された森林の割合)が49%なのに対し、本県は28%。成長産業にするためには、持続可能性を高める必要がある。

 放置された森林は荒れ、資産としての価値がなくなり、中山間地域の人口減少の遠因にもなるとされる。それを防ぐには、木の価値を高め、林業がもうかるようにすることが重要。森林は産業の場としての役割だけではない。自然環境を守り、河川や土砂の災害を防ぐためにも保全することが大切だ。森林を守り、有効活用するためにも佐藤さんには強い思いがある。「林業を若者が希望を持てる産業にしたい」
挑む、山形創生 記事一覧
文字サイズ変更
  • 小
  • 中
  • 大

県内7市発行メールマガジン登録無料

ふるさとだより

3月30日配信。登録はコチラ

ニュース特集

スポーツ

教育・子育て

おでかけ

暮らし情報

twitter発信中

山形新聞からお知らせ

  1. 【2017年8大事業】
     山形新聞、山形放送の2017年の8大事業が決まりました。詳しくは、こちらから
  2. 【やましん公式FB】
     山形新聞社は、インターネット交流サイト「フェイスブック(FB)」の公式ページを新設しました。
     公式ページでは山形新聞のニュースのほか、本社からのお知らせなどを中心に紹介します。
     アドレスは、こちらから
  3. 【やましんe聞で動画視聴】
     読者限定の電子版「やましんe聞」で動画を閲覧できる新サービスを始めました。詳しくは、こちらから。
  4. ◆中学、高校の各種スポーツ大会の記録を紹介。検索機能も備えています。アクセス方法はこちら
  5. ◆探したい記事がきっと見つかる、山形新聞記事データベース。他社DB横断検索が便利な日経テレコンジー・サーチファクティバ
  6. ◆県外でも今日の朝刊が朝一で読める「お届け電子版
  7. ◆ニュース速報、高校野球、モンテ情報、おくやみ… 身近な情報を携帯で確認「モバイルやましん
  8. ◆故郷の話題をメールでお届け、ふるさとメール会員募集(登録無料)
山形新聞から
販売から