挑む、山形創生

第9部農林業の可能性(7) 先端技術の導入

2016年10月23日
腕を上げたままの作業の負担軽減に効果が期待されるアシストスーツ=寒河江市
腕を上げたままの作業の負担軽減に効果が期待されるアシストスーツ=寒河江市
 赤く色付いた実が収穫を待つサクランボ畑。静まり返る園地にかすかな機械音だけが響く。ロボットがアームで実を摘み、黙々と働いている―。労働力不足や高齢化対策の一助として開発が進む収穫ロボットが、県内の園地で活躍する日が来るかもしれない。作業の効率化や高品質な農林産物の生産に向け、ロボットやICT(情報通信技術)などを活用する「スマート農業」。本県の農林業は今、それを目指して進化し続けている。

■将来性に確信
 収穫ロボットの開発は、本県の顔・サクランボのさらなるブランド力強化に向けた県の「山形さくらんぼ世界一プロジェクト」の一環として、山形大大学院理工学研究科(米沢市)が進めている。「農産物の中でも、サクランボはロボットで収穫するメリットが大きい」。研究に取り組む妻木勇一教授はその将来性を確信している。

 サクランボの収穫は脚立に上り、地面から3メートルほどの高さでの作業もある。上り下りは危険が伴い、体力的な負担も大きい。腕を上げたままの摘み取りはつらい作業だ。「自動で収穫するロボットがあれば…」。生産者の誰もが一度は考えるだろう。本県の果樹農家は職人気質で、自らの目で見て、手で収穫することにこだわる人が多いという。だが、高齢化と担い手不足の流れには逆らえない。

開発が進むサクランボの収穫ロボット
開発が進むサクランボの収穫ロボット
■実用化が課題
 収穫ロボットは実用化されれば現場の助けになると、県なども本腰を入れる。求められる性能はセンサー内蔵のカメラが実の位置を捉え、実や芽を傷つけない力加減でアームが軸をつかみ、もぎ取る―こと。自走式で園地を動き回り、夜間も稼働させられれば、もぎ遅れなどを防ぎ、収穫量アップも期待できる。

 試作機完成は3年後を目指しているが、実用化までは課題が多い。カメラやアームは完成しつつあるものの、自動制御はまだできていない。熟練の農家は1時間で2千個ほどを収穫するのに対し、現段階でロボットのスピードは1個取るのに1分ほど。自走にはまだ程遠い状況だ。

 妻木教授らは、収穫だけでなく、箱詰めや摘果など多機能型のロボットも視野に検討を重ねる。実用化の時期は先になるかもしれないが、「ロボットなら疲れ知らず。必ず農家の助けになるはず」と熱意を込めて研究を続けている。

 ロボットよりも現場での普及が早そうなのが、アシストスーツだ。可動式のフレームで肘の位置を固定する“肘掛け”のような役割。腕を上げたままでもサクランボ、ブドウなどの収穫作業を楽にできるようにするものや、電動式で腕力を補い、重いスイカなどの積み込みや収穫を手助けするタイプもある。

 新規就農者は少しずつ増加しているが、生産現場は今後、さらに集約化が進み、大規模経営が増えることが見込まれている。ICTや小型無人機・ドローンの活用も広がりそうだ。ドローンを水田の上空で飛ばし、水稲の生育診断と追肥をピンポイントで行ったり、熟練農家の技術をデータ化し、経験の浅い就農者の技術不足をカバーしたり…。それらは実用化に向けて取り組みが始まっている。

■鮮度保つ梱包
 流通面でも最新技術を生かそうとしている。本県の売りは生食でおいしいフルーツがあること。鮮度を保って海外に輸出するため、山形大とJA全農山形は3Dプリンターで果物などの形状に合わせた形の耐衝撃、保湿、保冷、防曇、防腐の機能を備えた梱包(こんぽう)資材を開発中だ。既に実証実験や試験的な輸出が始まっている。

 生産者は代々守り続けてきた地を耕し、実りを得てきた。伝統を受け継ぎつつ、最新の技術を積極的に取り入れ、果敢に挑戦し続ける。その姿勢が農林業による「山形創生」の実現には必要だ。

(「挑む 山形創生」取材班)
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