挑む、山形創生

第10部人を呼び込む(2) 伝統行事の継承

2016年12月07日
師走の鶴岡市中心街に羽黒山伏のほら貝の音が鳴り響く。冬の風物詩として広く市民に定着している
師走の鶴岡市中心街に羽黒山伏のほら貝の音が鳴り響く。冬の風物詩として広く市民に定着している
 個人旅行のスタイルが中心となるにつれ、観光客を呼び込むには「そこでしか味わえない素材」が重要視されるようになってきた。祭りもその素材の一つ。受け継がれてきた伝統行事に引かれるのは、そこに旅愁、郷愁といった日本人の感性に訴えるものがあるからかもしれない。

■100日間の修行
 師走を迎えた城下町鶴岡にほら貝の音が鳴り響く。大みそかから元旦にかけて羽黒山山頂で繰り広げられる松例祭に合わせ、山伏が商店街や家々を回り浄財を募る伝統行事「松の勧進」。気ぜわしさの中にも、どこか懐かしく、年の瀬へ向かう街並みに凜(りん)とした空気が漂う。

 修験の山・羽黒山は1400年以上の歴史を誇る。羽黒山伏の最高位である「松聖(まつひじり)」の2人が毎年9月24日から100日間にわたる修行に入る。庄内の冬の風物詩といわれる松の勧進も、その修行の一つ。100日目に当たる松例祭は、2人の松聖が修行を通して授かった験力(げんりき)を競うためさまざまな神事を夜を徹して行う。

 羽黒山山頂の三神合祭殿を舞台にする神事、庭上を中心に若者衆が躍動する「大松明(おおたいまつ)行事」(国重要無形民俗文化財)など松例祭の見どころは多い。権禰宜(ごんねぎ)の佐藤敬幸さん(43)は「自分たち神職が担う神事と、地元手向(とうげ)地区の人たちが受け持つ行事がそれぞれある」と説明する。一度見ただけでは全容をつかめない。「3年見ないと分からない」と言われるほど複雑多岐な祭りであることを物語る。

 近年、出羽三山に足を運ぶ観光客は増えている。2泊3日の日程で滝行などを体験するツアーは、60人の定員に対し5倍以上の申し込みが全国から寄せられる。今年4月の日本遺産認定の追い風も吹く。佐藤権禰宜は「見るだけでなく、体験を味わえるのが出羽三山観光の特徴」と言い切る。松例祭の見どころを分かりやすくまとめた印刷物のほか、外国人観光客用に英訳入りのチラシを作るなどPRにも力を注ぐ。

毎年8月に元住民やその家族らが全国から駆け付け、綱木獅子踊りを奉納する=米沢市・円照寺跡
毎年8月に元住民やその家族らが全国から駆け付け、綱木獅子踊りを奉納する=米沢市・円照寺跡
■女性も踊り手
 一方、伝承に苦労しながらも、わずか3世帯4人の集落に全国から人を集めている祭りがある。米沢市綱木の綱木獅子踊りだ。言い伝えでは、綱木に隠れ住んだ平家の落人が平家再興の願いを込めたのが、獅子踊りの始まりとされる。五穀豊穣(ほうじょう)を祈り、先祖を供養するため、かつては毎年8月14~16日、各家を回って仏間で奉納した。

 存続の危機が迫ったのは10年ほど前。会員の減少と高齢化が進み「獅子頭を博物館に寄贈しよう」とさえ考えていたとき、綱木獅子踊り保存会(高橋国彦会長)の前会長が綱木出身の若い世代に訴えた。「獅子踊りを絶やすことは簡単だ。しかし新しくつくるとなれば並大抵の苦労では済まない」

 地元だけで続けられないなら、出身者や縁者にまで輪を広げようというのが、保存会のやり方。さらに女人禁制の伝統を超え、2014年には女性として初の踊り手が誕生した。加えて、応援団ともいうべき「綱木獅子踊りを考える会」(雨田秀人会長)が積極的に支えている。

 今年も8月15日には獅子が集落を巡って踊りを披露し、全国各地から200人もの人が訪れた。数十年ぶりに見たという元住民は「子どもの頃に見た風景と何も変わらない」と目を細めた。笛と太鼓の音に合わせ力強く踊る獅子の姿に、観客は在りし日のふるさとを見ているようだった。高橋会長は「踊りは元住民やその子孫、そして縁もゆかりもない人を引き合わせる絆のかたち」と語った。(「挑む 山形創生」取材班)
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